「色褪せることのない悲しきラブストーリー」シュリ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
色褪せることのない悲しきラブストーリー
タイトルだけは知っていましたが、まだ観たことがなかった本作。最近になって韓国映画にハマり、本作のデジタルリマスター版のリバイバル上映があることを知り、急遽鑑賞予定に加えて観てきました。
ストーリーは、韓国情報部のジュンウォンと相棒のジャンギルは、情報提供者の殺害を受け、過去に何人もの要人を暗殺して影を潜めていた北の工作員イ・バンヒの活動再開を疑うが、捜査の手が及ぶ前に液体爆弾CTXを入手した北の工作員たちはソウル市内に爆弾仕掛け、ジュンウォンたちはバンヒの行方を追いながら事件解決に挑むといもの。
開幕後わずか数分で血が飛び散り、何人もが殺されるという、いかにも韓国作品らしい立ち上がり。いきなりハードな描写ですが、これがバンヒの卓越した手腕と、彼女の必要にして十分な背景を観客に強く印象づけます。その後、彼女の行方がようとしてわからぬまま韓国で次々と研究者が殺されていきます。テンポのよい展開に一気に作品世界に引き込まれます。
以降も、バンヒの所在と正体をめぐって興味をそそる展開が続きます。しかし、その風貌をあまりにも描かず、主要な登場人物の顔ぶれをあわせて考えると、かなり早い段階から正体がわかってしまうのがもったいないところです。いっそのこと、観客には正体を晒した上で、その複雑な心情に寄り添って描いてもよかったのではないかとも思います。
とはいえ、クライマックスでの彼女の表情、その後の留守電メッセージなどがあまりにも切なく、目頭が熱くなります。また、バンヒの上官ムヨンが北朝鮮の窮状を訴えるシーンも、切実感のある渾身の演技でとても印象的です。だからこそ、命令と愛国心と愛情の狭間で苦悩するバンヒの葛藤を、もっとひりひりと感じさせてほしかったと思います。
ただ、20年以上前の作品なのでしかたないのですが、銃撃中心のアクションシーンが多いのに、銃撃の音が軽いのが残念です。必要以上に揺らすカメラワークも、いささかチープに感じます。CTXの爆破も1回だけで、しかも模型感が漂うのはご愛嬌といったところでしょうか。このあたりはリマスター版とはいえ、古さを感じるのは否めません。また、名前が覚えにくく、途中で人物相関がわからなくなり、内通者のくだりがよく理解できなかったのは残念です。とはいえ、サスペンス展開の中で描く悲哀に満ちたラブストーリーは今観ても色褪せることなく、最後まで楽しく鑑賞できました。
主演はハン・ソッキュとキム・ユンジンで、愛と立場の狭間での葛藤を熱演しています。脇を固めるのは、ソン・ガンホ、チェ・ミンシク、ユン・ジュサン、パク・ヨンウら。
まーさん、共感&コメントありがとうございます。
レビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
映像や演出に古さを感じる部分はあるものの、最後は胸に迫る切なさがありますよね。