劇場公開日 2007年4月28日

「パンツはいてください。」バベル kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0パンツはいてください。

2018年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 アカデミー賞授賞式以前に鑑賞できていたら、作品賞の予想することもなかったのかもしれません。脚本はよく練られていて物語にのめり込む巧さは感じられたのに、独立した3つのプロットそのものには魅力がないのです。その点、監督のデビュー作である『アモーレス・ペロス』では人やモノ、そして伏線が3つのドラマを有機的に結びつき、ストーリー展開にも驚かされたものだった。『21g』ではプロットが単純なためか、フィルムをバラバラにして切り貼りしたおかげで複雑すぎて感情移入もできない欠点もあった。逆に考えると、イニャリトゥ監督は元が単純なプロットを壮大なドラマに作り上げることのできる天才なのかもしれないのです。

 この映画の予告編などで聞かれる“言葉が通じない・・・”というコピーが大変良い出来で、バベルの塔を作ろうとした人間が神の怒りに触れ、言葉も人種もバラバラにされてしまったという世界観に大いに期待してしまう。しかし、大きなテーマはさほど実を結ばず、“言葉の壁”よりも“心の壁”、または青少年の“性の壁”や市民と警察の間にあった“権力の壁”といったものまで感じ取れてしまう。特に、モロッコ、日本、アメリカにおける警察官の対応の違いが興味深く、この市民と警察との心の壁が最も強烈だったようにも思います。

 カンヌ国際映画祭から始まってGG賞、アカデミー賞と映画賞レースも大いに賑わせてくれたコン作品でありますが、やはり俳優、映像、音楽が秀でてました。菊地凛子とアドリアナ・バラーザももちろん良かったのですが、一押しはモロッコの少年ユセフを演じたブブケ・アイト・エル・カイドです。姉の裸を覗き見し、オナニーシーンを経て兄とライフル銃を撃つシークエンスの演技は一流俳優の片鱗さえ見せてくれました。兄ちゃんが父ちゃんに告げ口するシーンも面白かったです。

 最近、日本人が外国人女性を殺したり留学生が日本人を殺したり、アメリカでは韓国人留学生が銃乱射事件を起こしたり、他の国の者を傷つける事件が目立ちます。言葉の壁が心の壁をも作ってしまうことをリアルに感じる出来事ですが、それよりも根本的に、人々がお互いに殺し合う能力を授かったということも神が怒りのために人間に与えた罰なのであろうか・・・

kossy