「判り合うことが出来ないことの悲劇」バベル だいすけさんの映画レビュー(感想・評価)
判り合うことが出来ないことの悲劇
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ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司、菊地凛子出演のヒューマンドラマ。とても深い、考えさせられる作品でした。
モロッコの山間部を走る1台の観光バス。偶然、そのバスに放たれた1発の銃弾が、アメリカ人夫婦の妻に当たってしまったことから、「銃弾を放ったモロッコの少年」・「モロッコに旅行に来ていたアメリカ人夫婦」・「アメリカ人夫婦の2人の子供を預かるメキシコ人の乳母」・「モロッコの事件で使われたライフルの元の持ち主である日本人男性の娘」、人種も言語も生活環境も異なる登場人物達のストーリーが語られていきます。
この映画のタイトル「バベル」は、旧約聖書の中の「バベルの塔」の物語が基になっています。
遠い昔、一つの言葉を話していた人間は、神に近づこうと天まで届く「バベルの塔」を造ろうとします。神は怒り、人間の言葉を分かちバラバラにしてしまうという話です。
神の怒りに触れ、言語を分かたれてしまった人間は、元は一つであったはずなのに、お互いを理解することが出来なくなってしまった。そして、今では、同じ言語を話す人間同士でさえもお互いに心を通わすことが出来ないでいる・・・。
この作品は「判り合うことが出来ないことの悲劇」を淡々と残酷に描いています。
そして、この作品が言いたいこと(観客に対して投げかける疑問)はただ一つ。
「人間は本当に判り合うことが出来ないんだろうか?」
この疑問に対する答えの一つは、ラストシーンにあると僕は思いました。
賛否両論がある作品ですが、とても哲学的で、観る側が【自分で考えること】を求められる作品です。
この映画は決して万人向きではないです。映画に娯楽性を求める人は観ない方が良いですね。
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