「鬼才と言われた男!の肉弾格闘シーン10分間!」ゼイリブ かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
鬼才と言われた男!の肉弾格闘シーン10分間!
監督は鬼才ジョン・カーペンター。
【ストーリー】
誰も知らないうちに、地球はエイリアンに支配されていた。
社会が荒廃し、ゆくあてのないホームレスキャンプ住人の唯一の娯楽であった街頭テレビ。
たびたび電波ジャックする権力者たちを批判するレジスタンスの主張を見た肉体労働者のネイダは、ホームレス仲間のギルバートが教会にゆくとそれが流れることに気づく。
こっそりと中をのぞくとやはり、教会がレジスタンスたちの拠点だった。
一度はその場をはなれたが、直後警官隊の襲撃がおこなわれ、レジスタンス勢力は霧散してしまう。
ネイダが人の姿のなくなった教会をさぐると、そこには大量のサングラスが。
そのサングラスは、つければ敵の真の姿が見えるレジスタンスが開発したアイテム。
それをつけてまわりを見ると、町では人の合間にでエイリアンがあたりまえに生活し、街頭テレビメディアからは洗脳のサブリミナル映像が流されていた。
この荒廃や権力による暴虐は、エイリアンたちの人類奴隷化計画によるものだったのだ。
誰知らぬうちに進行していた未曾有の人類の危機を知らせるべく、ネイダは町を駆けまわる。
やーつらはみんなー生ーきているー♪
というわけで『ゼイリブ』です。
『ニューヨーク1997』『フィラデルフィア・エクスペリメント』『遊星からの物体X』などSF、アクション、ホラーで多くのエンタメ&カルト作を制作した、あのジョン・カーペンター作品。
あのあさりよしおから散々ネタにされた、あの、ジョン・カーペンターです。
ウルトラセブンだとメガネをジョワっとするとモロボシダンがセブンに変身しますが、このサングラスをジョワってすると、人間に化けてたドクロ顔エイリアンを見ぬけます。
安っぽいながらもけっこう面白い設定で、その使い方もけっこう考えられてます。
サブリミナル的CMに対する「大量消費社会そのものが資産家による大衆への支配」というわりとストレートなメッセージの、うまい伝え方にもなってますね。
さて、この『ゼイリブ』を語るうえでどうしても言及したくなるのが、中盤に仲間になるフランクとのケンカシーン。
その内容もくだらなくて、
「エイリアンを見抜けるようになるから、このサングラスをつけろおおお!」
「しつこいですね……わかったよ、と見せかけて誰がつけるかああああ!」
という、ほんとうに笑っちゃうほどムダな中身。
しかもこのシーン10分間にもわたるんですよ。
それをね、一月半かけて撮ったんですって。
自分が好きな伊藤計劃(故人)というSF作家さんのブログでインタビュー本を紹介してて、その質問に対する返答をちょっと書きだしてくれてます。
監督曰く
「だって長いケンカ撮りたかったし」
「いい体してる役者いたし」
「楽しかったし」
ちょっと口調がおバカっぽくなりましたけど、だいたいこんな感じの事を供述されてます。
よしゆるす。
ジョン、無罪放免だ。
『メタルギア』シリーズや『デス・ストランディング』で有名なゲーム制作者で映画ファンの小島秀夫の初期作『スナッチャー』の元ネタのひとつとも言われ、400万ドルという低予算ながら、十分な娯楽作として完成しているこの作品。
まだ出会ってない方がおられましたら。
カーペンター作品、いいですよ?