劇場公開日 2022年1月7日

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「以降のSF映画に多大な影響を与えた、最初から最後まで強烈な社会風刺に貫かれた社会派SFスリラー」ゼイリブ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0以降のSF映画に多大な影響を与えた、最初から最後まで強烈な社会風刺に貫かれた社会派SFスリラー

2022年1月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

『ジョン・カーペンター レトロスペクティブ 2022』での鑑賞。何度もビデオで観た作品ですがスクリーンでの鑑賞は初めて。強烈な社会風刺で幕を開ける本作ですがそもそも主人公のネイダがデンバーで10年務めたのに失業してLAまで流れてきたホームレスだという設定が痛烈。社会にコテンパンにしてやられているのにそれでもまだ社会に貢献するセカンドチャンスを求める極めてピュアで誠実な人。それが教会で手に入れたサングラスで世界が見えるようになった途端に世直しをしようと銃を取るわけですが、これって観客側からはヒーローに見えますが何も知らない劇中の人物にしてみればどうかしている男以外の何者でもない。ネイダ自身もサングラスをかけることで頭痛と引き換えに高揚感を得ているのでこのサングラスで何が世界を支配しているかが見えるようになるというのは教会で神の啓示を受けるのと同じ。サングラスをかけるかけないでネイダとフランクが延々路地裏でケンカする様を笑っちゃうくらい執拗に描写しているのも、真実を知る者とそこから目を背けたい者や自分が信じているものだけを信じたい者との断絶を表現しているもので、ブレインバスターやバックドロップ、金蹴り等でズタボロになりながら戦う二人の姿に滲む滑稽さに痛烈なメッセージが見えた気がします。ホリーがネイダを窓から突き落とすのを真上から撮るカットの鮮烈さもリストア版では冴え渡っていて、何度も観ているシーンなのにうわ!っと声を出してしまいました。最初から真実が見えているのが盲目の宣教師であるという皮肉も強烈、本作における“They”は本作公開から30年以上経った今もまだ世界を支配している現在が本当の意味での本作のオチなのかも知れません。

改めて本作が様々な作品に影響を与えていることを実感できたのも再鑑賞の醍醐味でした。まずは『マトリックス』、最近の作品だと『フリー・ガイ』。意外なところだと強烈なラストカットはイリヤ・ナイシュラー監督の『ハードコア』で引用されていることに気づきました。SFスリラーというよりも終始社会風刺に貫かれた底意地の悪いコメディに近い。そういう意味では『ドント・ルック・アップ』も影響下にあるように思いました。

よね