「いつまでも新しい」ゼイリブ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでも新しい
物語は前半と後半に分かれていると思う。前半は主人公が摩天楼の林立するニューヨークと思しき町にやってきて仕事を探し、ホームレスが集う場所を紹介されて寝場所にありつく話だ。盲目の牧師が演説するシーンが後半への伏線となる。
後半は襲撃された教会の隠し場所からサングラスを見つけるところから始まる。ただのサングラスかと思っていたのが、かけてみると見えなかった本質が見えてしまう。そこからは怒涛の展開で目が離せないが、取っ組み合いのシーンが長くてひと息つける。
説明はないが、主人公もフランクもベトナム帰りではないかと思う。武器の扱いといい、徒手の格闘といい、素人ではない。ベトナム戦争の終結が1975年で本作品が1988年、主人公が町に来る前に別の場所で10年働いたと言っていたから、辻褄も合う。
後半に登場するメグ・フォスターが演じたホリー・トンプソンの眼が恐ろしい。妙齢の女性にしては胆の据わり方が尋常ではない。BMWに乗って山の手に住む金持ちだ。ただのOLの筈がないのだが、サングラス越しの顔だけで分別する主人公はそこに気がつかない。
納得のいくラストシーンはとてもスッキリするのだが、ベトナム帰還兵の問題や格差の問題、差別的な政治、放置されるホームレスなど、カーペンター監督が本作品に盛り込んだテーマは未だに解決を見ていない。そしてこれからも解決することはないと断言できる。
それは人間が本質的に他人を差別し、迫害して、自分の利益を確保しようとするからであり、強者同士が徒党を組んで弱者から搾取する傾向にあるからだ。そういう時代が続く限り、本作品はいつまでも新しい。