劇場公開日 2022年1月7日

  • 予告編を見る

「社会の自文化を疑うことの必要性と決して近未来ではないことを痛感するリアルなSF」ゼイリブ たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5社会の自文化を疑うことの必要性と決して近未来ではないことを痛感するリアルなSF

2020年12月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

大学の講義の一環で鑑賞。貧富の激しい現代には実は異星人が牛耳っていて…というSFサスペンス。この映画が作られたのが1988年だと言うが、それを感じさせない撮影技術と洗練された音楽、そして、今の社会とも相違点があまりないという先見性にも驚かされた。

不景気で失業者が続出しているなか、ネイダはなんとか、工事現場の仕事を手にする。フランクとともに、ホームレスが肩身を寄せあって過ごすキャンプへと流れ着く。そこでサングラスを見つけたことでストーリーが動き出す。街を出歩いて見えてくるものは、社会の消費されていく気運と、異星人とエリートによって作られた世界。エリートは異星人から選ばれる様に、従順に日々を暮らしている。つまり、サングラス=異文化の流入の可視化できるアイテムなのである。だからといって、それを教えさせるために、5分以上も殴りあうことはないと思うが…笑。同時に進む、排除主義もフィクションには見えない。キャンプの破壊や富の冷笑、従順と働くエリートとの対比は、当時から何ら変わっていない現代を揶揄している。何より、テレビがもたらす作品の効果は、大きな意味を持っている。メディアは万人に情報を与え、影響をもたらす。同時に、認知を都合よくすることも出来る。その危うさと宣伝的な利用を刷り込むことで、一層のリアルを感じさせている。

当たり前のように作り出されている自文化も、実は1枚フィルターを通すと、排除へのシグナルや格差拡大の一因をつくっているのかもしれない。我々も一度、あらゆる物事に距離を取って見る必要がある気がする。メディアから多くの情報を取り入れることが出来る今、サングラスは自身の手で掛けるしかないのかもしれない。

たいよーさん。