ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン! : 映画評論・批評
2008年7月1日更新
2008年7月5日よりシネマGAGA!ほかにてロードショー
映画好きなら誰もが楽しめる、究極の娯楽映画
「好きこそものの上手なれ」という言葉に宿る真理を、初めて心底、痛感させてくれたのはクエンティン・タランティーノだった。そしていま、そのタランティーノだって猛烈な嫉妬と称賛をわき上がらせずにいられない才能が登場! それが英国の天晴れな映画バカ、エドガー・ライトだ。
ゾンビ映画への愛を昇華させた「ショーン・オブ・ザ・デッド」も傑作だったが、同じ主演コンビ(サイモン・ペッグは脚本も共同執筆)と組んだ本作はオタクのみならず、映画好きなら誰もがとんでもなく楽しめてしまう、究極の娯楽映画。ハリウッドの刑事アクションを中心に、スリラーやホラー、マカロニ西部劇に東宝怪獣映画に至るまで、映画ファンをニヤリとさせるディテールをてんこ盛りにし、そうしたジャンル映画やミステリーの「お約束」で遊び倒す。しかし、「好きだから何でもかんでも入れました」という、オタクの自己満足には決して陥っていないのだ。好きな映画への「好きだ」という気持ちをみなぎらせながら、そのオマージュ一つ一つがしっかりとクールなストーリーテリングの一手として、高度なギャグとして機能しているんだから、うれしいじゃないか!
評判を知った映画ファンによる公開嘆願の署名運動が奏功したという経緯も、実に似つかわしく痛快。映画バカによる映画バカのための、おバカ映画ではない大傑作。見逃すな!
(若林ゆり)