戦場のメリークリスマスのレビュー・感想・評価
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君に胸キュン
あのテーマ曲とともにタイトルが出た瞬間、十代に時が戻ったような気がした。当時、小娘だった私は、ボウイの美しさにやられ、4回この映画を見た。同じ映画を複数回見たのは、初めてのことだった。原作本も読んだし、デビッド・ボウイのアルバム「レッツ・ダンス」も擦り切れるほど聴いた。コンサートにも行った。私の青春はボウイに彩られたと言ってもよい。今回見直しても、やっぱキレイです〜。あの緑がかった灰色の目!くう〜。
強烈に記憶に残っていたところもあったが、忘れてたところもあった。ヨノイが2.26に決起できなかったのを悔いていたのは、当時の自分はスルーしていた。どういう意味か、完全にわかってなかった。勝手な想像だけど、ヨノイの祖父は薩摩藩の人で、幼少からビシバシ武士道を叩きこまれ、常にもののふの美学を意識して生きてきたのではないか(あくまでも妄想)。散るべき時を見逃してはならない。散るなら美しく。ヨノイは2.26を逃してしまった。
セリアズの容姿が美しいのはもちろん、捕らわれた身でも毅然とした姿に、ヨノイは美学を見てしまった。原作では、セリアズの歩く様子を、爪先に重心を置く「動物のよう」と評している。野生の動物は自由で気高い。ヨノイはセリアズを理想化してしまった。
しかし、セリアズは自分の過去に苦しみ、ヨノイの理想と実際は違っている。彼は頭も良く、見た目も良く、恵まれているが、満たされることはなかった。心のどこかで死に場所を求めていた。ヨノイの激情を止めるため、勇敢な行動をしたようでいて、実は自殺に向かっていたのではないか。
あと、ジョニー大倉演じるカネモト。昔見た時、やはり彼のことはわかってなかった。つらい。なぜハラキリさせられるんだ。日本人じゃないのに。最後の言葉も韓国語。今見ると悲しくてたまらない。でも、こんな理不尽、戦争中はゴロゴロ転がってたんだろうな。
セリアズの弟の歌、透明なボーイソプラノ。これも確かサントラを買ったのか、かなり正確に記憶していた自分にびっくり。十代の記憶力すごい。寄宿学校の新入生へのイニシエーション。歌がうまいらしいから歌えと言われ、言葉通り朗々と歌ってはいけなかったんだよ、弟よ。
坂本龍一のメイクは多少違和感あるけど、あのボソボソしゃべる人が、あれだけ早口で腹から声出してるなんて、ずいぶんがんばったなと思う。たけしは目がきれいで、ハラの最大のチャームポイントだから、とても説得力があった。
大島渚ってほんとに海外向けに製作してたんだなぁ。クレジットが全部アルファベット。文字が赤ってのも、おしゃれだ。音楽も国境を感じさせず、とても良かった。鐘のような音を使ったテーマ曲は、教授の代名詞になった。歌手のボウイが音痴の役というのは、ご愛嬌。
2023.4.4追記
坂本龍一氏がとうとう亡くなってしまった。
悲しい…。
どうか安らかにお眠りください。
同じ時代を生きることができて、本当に良かった。感謝。
そうなんです、ボウイの美しさは悪魔なんです
心から愛していますデビッド・ボウイ様😍
私もヨノイ大尉同様、あなたに狂いました。
小学生の時に一目惚れ❤︎
もぅ、仕方ないんです、そう、悪魔なんです。
大島渚監督、良く見抜きました。
大画面、映画館のスクリーンのボウイはまた一段と不敵で美しい。ストーリー、というより映画館でまた戦メリを観ることが出来たというだけで号泣でした。
ヨノイがセリアスを、ハラがローレンスを、それぞれ好意的に扱った意味ということを今回深く考えました。
難しい、大変に難しいストーリーですが、観るたびに何かがつかめそうで、でもつかめない、モヤモヤの残る映画です。
思うのは、この時の武さんは本当にすごい何かを出している。デビッド・ボウイにも負けないあの存在感と輝き、得体の知れないは生命力は何なのでしょう。
配役と名曲と永遠の謎のストーリー、これからもエンドレスで見続けます。
【感想文】魂の交流なんだと思う
戦場のメリークリスマス、有名すぎる名曲そのメロディは知っていても映画をまったく知らないでいた。冒頭から流れ、心捕まれる。
文化の違いは思想・価値観の違いを生み、解りあうことは困難となる。この時代の日本の思想、集団意識は恐ろしく感じた。いや、現代もまだ変わっていないかもしれない。
戦争という異常の中で、人間としての心を失くさずにいることも困難かもしれない。
ヨノイ大尉はセリアズに対し自分と同じ何かとは別に自分にはない孤高な気高さを感じ、惹かれたんじゃないか。その内側から滲みでる美しさに惹かれたんじゃないか。
セリアズもまたヨノイ大尉に自分自身をみた、だからこそ救いたかったんじゃないか。
彼らのシーンで2度流れた曲『種を撒く』が素晴らしかった。
絶望的なあの状況で、彼のキスにより、どれだけ多くの魂が救われただろう。彼は彼の命をもって種を撒いた。
集団として個人を失くし、軍人としての役割のなかで生きているハラ軍曹に対し、ひとりの人間としての関わり続けていたロレンス。彼のおかげで失くさないでいられた人間としての心。お酒とクリスマスを理由にして、サンタクロースとして、ひとりの人間としてロレンスとセリアズを釈放する。
最後のメリークリスマス!ミスターロレンス!には、17の時から軍人として生きてきた彼が、個人として選択した行為(自由)を誇りに思っているようにも感じたし、ロレンスに対する感謝と敬意と愛を感じた。
異常環境の中で生まれる性愛というテーマだけでは片付けられないものがあったし、友愛や性愛は混同していったとしても、根底にあるのは愛だと思う。
セリアズはたとえ弟に対する贖罪であったとしても、大我の愛をもって人間を救おうとしていた孤高な戦士。
デヴィッドボウイは本当に美しかったし、たけしの瞳も美しかった。
各人物の放つ美しさの表現として個人的な解釈として、セリアズの美しさはデヴィッドボウイ自身が放つ美しさで十分表現されていて、坂本龍一はメイクする事でヨノイの足りない部分もしくは背伸びしている部分を表現としているような気もした。
目の美しさだけを表現したたけしも見事だなと。
大島監督って凄い人なんですね。
原作『影の獄にて』を読んでから再び観たい。
初見…
見たい映画がなくてなんとなく観賞。なるほど、名作と言われるわけだ。戦争捕虜という極限の緊迫感の世界が淡々と描かれていてすごい。実はたけしはじめ俳優陣があまり好きではないのも見なかった理由。が、みな、素晴らしい演技だった。ちょっと聞き取れない日本語が多かったけど…。みて良かった。
初見から25年後に見たのは「狂気の中の強烈なホモイズム」
若い頃見た映画を大人になってから見ると、印象が大きく変わることがある。
小学生の時みた「となりのトトロ」では妹が行方不明になる姉の不安が痛いほどわかったが、子供をもった今では完全にそれは健気な兄弟を応援する親からの目線になる。
結局物語というのは作り手よりも受け手の感覚の違い次第でどんな形にも変わるということなのかもしれない。
今回UPLINKの閉館間際に駆け込みで再見した「戦場のメリークリスマス」もそうだった。
18歳で美術大学に入ったばかりの頃、見ておくべき映画としてレンタルでVHSを借りた。
初見当時の自分は戦争末期の狂った日本人の姿にただ眉をひそめたものだったが、25年経って見たそれはまさに「狂気の中にある強烈なホモイズム(そんな言葉があるか知らないが)」だった。
ビートたけしのサディスティックなホモイズム、切腹させられたジョニー大蔵の「真夜中のカーボーイ」的ホモイズム(本編ではあまり触れられていないが、傷ついた俘虜の手当てからの求愛の流れはそれに近いものだと思う)、デビッドボウイの魔性的ホモイズム。ローレンスとたけしの間、デビットボウイと幼少期の弟との間にも、強い精神的なホモイズムを感じられる。
極度に閉鎖的な男の世界で男同士が(言葉にこそ出さずとも)性愛を求めてしまうのはある意味で必然なのかもしれない。共感や同情、憧れや思い込みを愛情と勘違いすることは何も男女の間だけに存在するものではないだろう。本作で大島渚の描きたかったそれは、例えば戦国時代合戦の場や刑務所の中、学生男子寮の世界でも同じことなのだろう。
熱血スポ根の祖、梶原一騎的な「男の世界」も、見方のよってはホモイズムの極みだ。
制作の裏側など詳細は知らないが、メインキャストのほとんどは当初想定されたものではなかったという。製作サイドの意向なのか予算的にやむを得ない故の結果なのか、いずれにせよ見事な配役だった。
※本文での「ホモイズム」表記に差別的な意図はなく、同性における恋愛・性愛感情の象徴として書き記したものです。
戦場のメリークリスマスの曲が好きで、今回上映が決まって映画館で観れ...
戦場のメリークリスマスの曲が好きで、今回上映が決まって映画館で観れて、この曲もスクリーンで聞けて最高だった。内容は少し難しかった印象だが、出演者の表情等、忘れられない作品にはなった。
【戦場と男色】音楽はやっぱり最高!
わたしには“全く響かなかった”、“理解できなかった”というのが予備知識などなく本作を観た最初の感想。
まぁ〜、とにかく日本軍の鬼畜ぶりに終始イライラしっぱなし、彼らの、いや、戦争の愚かさ、おっかなさ。さらに洗脳の恐ろしさと、自分の正しさを信じて疑わないことの恐ろしさがありありと描かれている。
ところが、鑑賞後に詳しく調べてみると、なるほど!と、私が鑑賞時にひっかかっていたすべての謎が解けた。
ヨノイの狂気に満ちた行き過ぎた行動は自身のセリアズに対する恋心への自制心と葛藤からきているのだろう。
セリアズを初めて見た時、上半身の裸を見ただけでのあのヨノイの動揺っぷり。ホッペにキスをされた際の失神(どんだけウブなんだw)。恋に関しては驚くほどに奥手で純粋なのね。
実際に男色行為は兵士や士官の間で蔓延していたらしい。
戦争映画だけど美しい、景色も映像も音楽も。しつこいようだけど私は日本軍兵士達の鬼の所業に対する怒りの感情が勝り、本作を深く見ることができなかった。だけど不思議と最後は感動しちゃう。ビートたけし演じるハラの無邪気な笑顔に泣けてくる。
音楽はやっぱり最高、よくピアノで弾く曲が『戦場のメリークリスマス』聞けてよかった。
内容よりも話題性やエンタメ的な作品
日本軍が主人公なのに物語の大半は字幕 坂本やデビットは戦時下にしてはイケメンでキレイすぎるし彼等は本業じゃないので違和感!
本国での回想シーンは長過ぎで不要でむしろたけしや坂本の国内でのシーンがあっても良かったと!たけしの罪状は捕虜虐待?何を訴えたかったのか作品のテーマが不明確?
戦争映画かと思いきやもっと私的で耽美的な物語。
この度リマスター上映で初観賞。
坂本龍一さんの主題歌のみ知ってたけど、他はほとんど前知識なしで観た。
劇伴も含めて独特の雰囲気。
戦争映画かと思いきや、舞台背景は戦時下ではあるものの、主題はそこになく、主にハラ軍曹やヨノイ大尉と捕虜たちの閉じたコミュニティでの関係を描いた、一種の耽美的な作品だったという印象。
ヨノイ大尉がセリアズ少佐にキスされて恍惚とした表情を浮かべるシーンは、なんというか見てはいけないものを見てしまったショッキングさがあった。
観終えてみると、出会った瞬間にヨノイ大尉はセリアズ少佐に囚われてしまったのだなと思える。
あの極限の状況下で、片想い?した相手に焦がれながら自分を戒め続けた一人の青年がヨノイ大尉だったのだ。
とはいえ個人的にはハラ軍曹とロレンスの関係の方がグッときたな。ある部分では敵対しあいながらも、でもその底ではお互いのことを認め合っている信頼感のようなものを感じられて。
そして、若いデヴィッドボウイや坂本龍一の美しさはすさまじかった(坂本龍一はあんまり演技が上手ではなかったが…)。
あとはやはり北野武さんの独特な存在感がとても印象的。狂っているようで無垢さも感じられる、あの人にしか出せない雰囲気。
まさにセリアズ少佐の劇中の言葉「変な顔つきだが目は美しい」を体現していた。
収容所で酔っていた時と、ラストシーンのハラ軍曹の「メリークリスマス、ミスターロレンス」のあの優しさと狂気の混じったような何ともいえない表情はちょっと忘れられないと思う。
あと戦争を知らない世代としては、日本軍のやり方(切腹制度も含めて)はやはり色んな点で気持ちの良いものではないなと思う。戦場に身を置き戦い合った人間同士なら感じ方はまた違うのだろうけど。
感じ方といえば、この作品を観終えてみると坂本龍一さんのメインテーマ「戦場のメリークリスマス」が鎮魂歌のように聴こえるのも面白かった。
死んでいった者たち、秘めて報われなかった想い、それらへの鎮魂歌。明るさと仄暗さ、美しさが混じり合う不思議な曲だ。
クリスマスの思い出
捕虜と看守の複雑な関係の話
はずかしながら初めて見ました。
伝説的な映画だとは知りつつも旧日本軍映画って苦手なんですよね。
劇場でリバイバルとのことで負の歴史を直視したくない弱い心を奮い立たせて鑑賞
伝説になるのも納得の素晴らしい作品でした。
デビッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、たけし、彼らの演技と大島監督のセンスが融合してこの映画を永遠に色あせない作品にしている。
セットも広大だし、捕虜セキストラ多さとガリガリ感、なんともリアルでしたね。
ふてぶてしくてハンサムで仲間に優しいセリアズ少佐、英国紳士たる堂々とした態度は観客までも魅了する。難しい役をボウイは見事に演じていた。かっこよかったです。
仲間を励まし、最後まで抵抗し、己自身の危険よりも仲間を救おうとした勇気。
こんなにも複雑な感情の入り混じった抱擁とキスを見たことが有るだろうか。
セリアズの表情がなんとも言えず胸に刺さる。
ヨノイも複雑でしたね、226事件に参加できず、同期の友と死ぬこともできず、同性に惹かれる自分が許せない。セリアズに一目ぼれして職権乱用、贔屓してるのに拒絶され、でも彼に何らかの対抗をしようとする姿、キスされて腰抜かす所は切なかった。
髪を切り一礼をして去っていく姿、なにかが吹っ切れたのか、いさぎよい姿でしたね。
坂本龍一のアイシャドウとメイクが艶っぽくて始めは違和感があったのだけれど、純粋さと邪さが宿ったいい目でいした。
目といえばハラですね、いやな看守長なのにどこか憎めない。
冒頭の部下の腹切りや囚人いびりは酷かったけれど、戦争という極限状態にあればだれもが正常ではいられなくなる、でも目だけは光り輝き澄み切っている。
ラストシーンのハラの目の輝き、純粋な笑顔はまさに日本人の笑顔なのではないだろうか。
北野武の無邪気な笑顔は世界中の観客の目に焼き付いた事だろう。
公開当時の世間の評価がどんなものであったのか知りたくなりました。
凄まじい映画だとは思うけれど、一般人にはなかなか受け入れられない内容な気がする。
なんにせよ今回のリマスター版を劇場で見れたことに感謝。
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劇中セリフより
「饅頭より花の方が美味いな」
どんな相手でも毅然とした態度で臨む事こそが強力な武器になる。
捕虜たがらと卑屈になる必要はないのだ。
こんな映像表現があってたまるか
凄かった…とにかく凄かった…
大島渚か。スゲェよ本当に…
名作だとか傑作だとかそんなレベルじゃない。もはや伝説。
目に見えぬ衝撃が襲いかかった。
果たして何と感想を書けばいいのだろうか。
まず最初に言っておきたいのは、面白い!とも感動した!とは微塵も思っていない、ということ。ハッキリ言えば脚本はやや突拍子だし人間ドラマがしっかりしてるとは言いづらい。セリフも聞き取りづらいし、たけしと坂本龍一の演技もどこかたどたどしい。
しかし作品自体が何かの狂気に取り憑かれているようで、スクリーンを観ているだけで恐怖すら感じる。この正体は何だ?と考えると脳裏には、たけしの笑みが思い浮かぶ。あんなに危なっかしい笑顔は無いだろう。何を考えてるのか分からない恐ろしさが潜んでいる。
ズバリ言ってしまえば演技が下手くそなだけなのだが、いやだからこそ曖昧で生々しい演技をしている。
坂本龍一だってそうだ。揺るがぬ日本男児という役柄だがその一方で幼さも感じる。これもズバリ言ってしまえば演技が下手くそなだけだが、かえって日本人の見栄を張る精神を反映している。
このたどたどしい演技こそが、当時の日本兵の狂っている様を「空気」で表現しているのだ。
そして今作を語る上で必然となるのがデヴィッド・ボウイの存在。
クリストファー・ノーランはこの映画を「マイフェイバリットムービーだ。デヴィッド・ボウイのカリスマ性を捉えることに成功した稀有な作品」と評す。特にこれといって演技が上手いわけじゃないんだけど、存在感は圧倒的。カッコイイ!のレベルではなく、美しい…のレベル。目が合った瞬間、心を奪われる。
"映画史上、最も美しいキスシーン"と言われるシーンは残像が移動し完璧なカメラアングルでビシッときまる。思わず身震いしてしまったし、無性に泣きそうになった。実際泣いている人もいた。感動、とかでは無く、上手く言語化出来ない「何か」が勢いよく込み上げた。
本当に奇妙な作品だ。
こんなにも言葉で表せない感情を抱いた作品は無い。喉まで出かかってるんだけど、口から言葉として吐き出されない。
そしてラストカット。
これまた震え上がった。鳥肌が止まらなかった。あれほど完璧なラストシーンは観たことが無い。「メリークリスマス。メリークリスマス、ミスターローレンス。」
エンドロールが終わってから席を立てなかった。映画館にいるということすら忘れていた。虚無に落ちた。泣いている長年のファンと思われる人もちらほら。鳥肌が止まらないまま席を立ち、その瞬間から脳内で坂本龍一の名曲『Merry Christmas Mr.Lawrence』が永遠と再生されている。伝説が、脳内に、取り憑いた。
自分にとってこれは映画では無く、もっと大きな「何か」でした。
この衝撃を映画館で味わえて本当に良かった。
1942年、太平洋戦争中のジャワ、山岳地帯の谷間にある日本軍・浮虜...
1942年、太平洋戦争中のジャワ、山岳地帯の谷間にある日本軍・浮虜収容所。
ある日の未明、朝鮮人軍属カネモトによるオランダ兵捕虜に対する性的暴行事件が起きた。
ハラ軍曹(ビートたけし)は、通訳役の英国軍・ローレンス中佐(トム・コンティ)を連れ、独断で処罰にあたろうとしていた。
そこへ駆けつけたのは収容所長のヨノイ大尉(坂本龍一)。
ハラ軍曹へ後刻報告の命を出し、大尉は日が昇ると軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。
ヨノイ大尉は、その軍律会議・法廷の場に被告として立っていた英国軍・ジャック・セリアズ少佐(デイヴィッド・ボウイ)を一目見て衝撃を受ける・・・
といったところから始まる物語で、初公開時に観たときにはさっぱりわからなかった映画で、公開当時は「ホモセクシャルを扱った・・・」云々の宣伝がされていたように記憶しています。
たしかに男性しか登場せず、冒頭から男色が扱われているので、あながちまちがいではないのですが、根底にあるのは、西洋と日本の文化・精神・価値観の激突、でしょう。
映画が始まってしばらくしてから登場するセリアズは、デイヴィッド・ボウイの容貌もあり、悪魔的な魅力をたたえており、バダビヤの処刑シーンでは磔刑に処せられたキリストを彷彿とさせます。
タイトルのクリスマスはとりもなおさず、キリストの生誕を祝う日であることから、セリアズはキリストをモチーフにしていると思えます。
そのセリアズを一目見て衝撃を受けるヨノイ大尉は、その美を通して、西洋の神髄のようなもの魅入られたわけで、このシーンはルキノ・ヴィスコンティ監督『ベニスに死す』の老境の作曲家アシェンバッハが浜辺で美しい青年タジオを見出したシーンを思い出しました。
その後、セリアズはすんでのところで命拾いし、ヨノイが管理する浮虜収容所に引き取られることになるわけですが、西洋精神と日本精神の小競り合いともいえる小さな出来事が続いた後、冒頭のカネモト事件が佳境に入ります。
カネモト事件の中心となるのは男色ではなく、「死」に対する西洋と日本での捉え方で、「死」=「潔し」とする日本的思想を、映画は観客に対して疑問符を投げかけていきます。
死が潔いものならば、勝つこと(=生き延びること)が重要な戦争の結果は明らか。
そして、もうひとつの敗因は不寛容。
「あるべき」姿を推し進め、それ以外は許さないという態度。
他者を、自分と、自分たちと異なる他者は受け容れないという態度。
結果、当然の帰結として、日本は戦争に負けてしまった・・・
クライマックスは、捕虜全員を整列させ、捕虜長のヒックス(ジャック・トンプソン)に対して、兵器の専門家を問い、回答を拒否したヒックスに対して、ヨノイが抜刀するシーン。
静かに歩み寄ったセリアズに抱擁されたヨノイは卒倒してしまう・・・というシーン。
少しずつ西洋的なものが浸潤していったヨノイにとって、振り上げた刀でヒックスを斬り棄てる覚悟はあったのか・・・
セリアズの抱擁は、ヨノイの弱さをヨノイ自身が認めても構わないという赦しだったのではないだろうか・・・
そして、赦しを授けるセリアズ自身にも許されない過去があった。
それは人間の原罪ともいうべき、他人に与し、みなと異なる弟を見殺しにしたこと。
ヨノイは更迭され、セリアズは首だけを残して地中に埋められていまう。
磔刑から逃れたキリストは、日本軍の刀により斬首されたかのように・・・
セリアズの回想シーン以降は、うまく理解・呑み込めませんが、やはり、なんだかただならぬものを観たような気がします。
そして、ラストシーン。
戦後、処刑を待つハラのもとをローレンスが訪れるわけですが、そのときのハラの姿は清々しくも、どことなく奇妙です。
剃髪し、まるで出家僧にでもなったかのような風貌で、ほとんど英語でしゃべるハラ。
「メリークリスマス、ミスタァ・ローレンス」と声をかける笑顔。
ローレンスと和解し、西洋の文化を理解し、「キリストの生誕日、おめでとう」と言いながら、旧来の価値観である「潔い死」を迎えようとするハラの姿。
その姿は清々しいがゆえに、やはり、かなり奇妙です。
もしかしたら、戦後の日本人はそんな姿で生きてきたのかもしれません。
ローレンス! の言い回しがなつかしい
スタンプ会員の日にいつもの映画館で
先週とは違いそこそこの入り
この映画館は4K修復などのリバイバルをよくやっていて
前に太陽がいっぱいとかストリートオブファイアーを観た
公開は中学生の頃で
オリジナル上映は観ておらず
大学生の頃にレンタルビデオで観たような記憶があるが
今回ほぼ初見の印象
当時のオラには難解だったか退屈すぎて
途中で観るのをやめたのかも
覚えていたのはジョニー大倉の切腹とたけしの介錯
たけしのラストのセリフと笑顔
たけしの念仏シーンは印象深い 意味はよくわからんが
あとローレンス! の言い回しがなつかしい
刑事ヨロシクの延長の芝居
Hana-biの世界とは一線を画す
坂本龍一の昇天シーンはコントと紙一重
デビッドボウイの学生服も単に監督の趣味かな…と
どの程度原作に忠実なのかは知らぬが
エピソードが本筋から遊離しているような…
あと生き埋めと蛾の画 意味が分からぬ
まぁ最後まで完走できたのは
それなりに鑑賞力がついているのかも
何せ昭和の作品だからな~
今観るといろいろ粗くて観づらい
セリフも聞き取りにくいところが多々あった
今の映画のクオリティの高さとか見易さに気付く
英語の発音とか役者の歯並びとか
逆にリアリティーはあるかも
若い内藤剛志も出ているし
本編では気付かなかったが
エンドロールで三上博史の名前も見つけた
そういえば本間ゆうじってイキのいい役者だったなぁ
たけしの映画監督進出とか
坂本龍一のラストエンペラーとかレヴェナントにもつながる
歴史的な作品かと
予告編でやはり大島監督4K修復の愛のコリーダ…
藤竜也若い 後に北野作品龍三…に出演
これも何かの繋がり 奇縁だなと
鑑賞後恒例のひとりベンチビール 今日は東口にしようかと
スペースを探すのに困るほど 結局先週と同じ西口でグビ
コンビニではビールを大量に買い込む集団がいた
本末が転倒している緊急事態だ 健全でいいことだ
飲め飲め
とても儚い作品
故・大島渚監督の代表作。
ここえきてリマスター上映にはちょっと驚きました。もう30周年だったのですね、早いものです。
作品は4人の戦地での邂逅を描いた物語。
とにかくキャスティングが凄い。メインの4人のうち、3人がいわゆる「役者」でないのですから思い切ったものです。
地味な役どころでしたがトム・コンティの芝居が土台を支え、その分他の三人は思い思いに演じていた様にも見えました。
他の三人は芝居というよりその表情や佇まいが素晴らしく、それを引き出しカメラに収めた監督の力量が伺えます。
他にも戦争を舞台にした作品でありながら戦闘シーンが無い、出演は男性のみと色々な実験的なアプローチが見られます。
個人的に一番はボウイと教授という組み合わせ、これは誰も思いもよらなかったでしょう。
またこの二人が作る空気が良く、実に艶があるんですね。
あと何と言ってもオープニングの美しさなんです、メインテーマと相まって幻想的ですらあります。
オープニングというと「バグダット」がとても好きなのですが、それと同じようなもの凄い完成度を感じるんです。…まぁ単に好みと言えばそれまでなんですけど。
そして本作は2023年に大島作品が収蔵されるため、これが最後のロードショーとなるようです。
まだ観ていない人も、もう一度観たい人も自身の目で確かめてみて欲しいと思います。
二組の、片や不恰好な友情と、片や気付いてはいけない惹かれる心。
それぞれのラストシーンも心に残る、とても儚い作品です。
敵でも味方でも友情でも絆でもない特別な繋がり
正直なんといえば良いか分からない。
この作品の良さは言葉にできない。
でも、ずっと胸を抉られ続けるようなそんな映画でした。
日本と欧米の死に対する考え方の違い。
日本の行き過ぎた武士道精神は、時代錯誤感が凄くて少々胸糞悪かったですが、特に戦争において、みんなが悪であるという言葉は、特に胸に刺さりました。
戦争映画、反戦映画のような気がしますが、自分は音楽映画だと思いました。
映画開始早々のヤモリや虫の鳴き声にはじまり、「戦メリ」の世界観を象徴づける坂本龍一のサントラはもちろんのこと、俘虜たちの一体感が感じられる讃美歌やセリアズの弟の美声などなど。
数々の“音“が、この作品をより鮮やかにしていたように思います。
そうかと思えば、酔ったハラとの会話だけでクリスマスだというのが伝わっくるし、戦闘シーンやゴア描写などが無いにも関わらず、あの緊迫感が出せるのは世界のオーシマこそのことなのでは。
デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし、ジャック・トンプソン、ジョニー大倉、内田裕也…etc
というキャスティングもなかなか。
どのキャラクターも個性的で魅力的。
冒頭の日本語が聞きどりづらかったり(それはそれで良いんですが)、なんでそうなるのとイマイチ理解できない点があったりもしましたが、80年代に大島渚とあのキャスト・スタッフだからこそ成立した、名作中の名作なんだと感じました。
音楽のすばらしさ
4k 修復版を鑑賞。新鮮な気持ちで観たのだが、妻が「絶対、最近観ている」とのこと。
以前の記録を見てみたら、2021年4月25日にまんまと観ていた。なんで自分は全く覚えていないのだろう。寝ていたのかな。
以下は2021年のレビュー、感想は同じ。確かに今回の画像は綺麗だったが、空の色などが変な感じがした。
「絶対に以前に観ているだろうと思っていたが、おそらく未見であった。
ストーリーはあまり響かなかったが、皆が知っているメロディーのテーマ曲にはグッと来た。
北野たけしの目が狂人の目であった(選んだ基準は澄んだ目らしい)、新人とは思えない。
ローレンスが早口で何言っているかわからなかった。」
デヴィッド・ボウイが美しすぎて
ボウイが美しすぎて泣きそうだった。っていうか泣いた。挙動不審ですみません。
映画公開時既にそれなりに育っていたので(歳がバレる……)知ってはいたけど、これまで見たことがなかった。せめて一度は見ておこうと足を運んだ。
ごめんなさいね、当時観ていればまた違った感想があったかもしれないけど、正直あまり乗れませんでした。詳しくは言いませんけど。
そんな中、本当にボウイが美しくてですね。わたし、『地球に落ちて来た男』も『ラビリンス/魔王の迷宮』も『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最後の七日間』も『プレステージ』も見てますけど、こんなにボウイが美しく映し出される映画はかつて見たことがなかった。『地球に落ちて来た男』は別の意味で見逃せないですけど(察してください。。)なぜこの映画を今まで観なかったのかと、本気で後悔しました。
最後とは言わずに何度も上映してほしい
一昨年末頃に午前十時の映画祭、シネコンで鑑賞。
それと比べて今回の4Kリマスターは特に変化を感じなかった。
シネコン上映の時から4Kだったのだろうか。
しっかりと見直すと、やはり観え方が変わってくる。
様々な登場人物へ感情移入が出来る。
部下を守る俘虜長。治安を守る者。管理者。仲介役。
無限に楽しめる映画なのではないのか、と感じてしまう。
だからこそ、大規模上映終了?のアナウンスは残念。
最後だというのであれば、もっと宣伝してくれ。
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