「奇跡の一作」戦場のメリークリスマス マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡の一作
大島渚(1932-2013)
戦後を代表する
演出家・映画監督
反権力・貧困など
社会派で知られ特に
「政治」や「性」を
特徴的に描く
「松竹ヌーヴェルヴァーグ」
と呼ばれる作品群で
知名度を上げていった
バラエティ出演も多く
一般にも知られる機会が
多かったが
晩節は脳出血と後遺症に
見舞われ1999年「御法度」
を最後にメガホンを
ついぞ取ることはなかった
影響を与えた監督は
マーティン・スコセッシから
クリストファー・ノーラン
そして北野武まで
枚挙にいとまがない
坂本龍一氏追悼特別上映
作品自体は観たことはあるんですが
大スクリーンで一度という事で観賞
1942年
ジャワ島
レバクセンバタの日本軍俘虜収容所
国に忠誠を誓い
いつでも死ぬ覚悟を決めている
と豪語するも
俘虜達と不思議な友情を
持っていく
ハラ軍曹(と日本兵たち)
日本文化を知りながらも
精神性までは理解できず
板挟みになる
ローレンス
肉親にもひどいことをした
自分自身の苦い過去から
死んでもいいから自分を
見つめ直したいと戦地に
身を置いていた英国軍少佐
ジャック・セリアズ
とそのセリアズの
真っすぐな瞳に
惹かれつつ自分の今までの
生き方と相いれられず
葛藤し続ける
ヨノイ大尉
立場を超えた友情なのか
もしくはこれはもう
愛なのかという描写を
続けながらそれぞれの
登場人物の心象が
むき出しでほんとに
魅せられる作品です
坂本龍一の全然
言えてない日本語セリフとか
ダンカンコノヤロー的
たけしのセリフ回しとか
全然気にならない
むしろ素のまま
やってくれる事で
どうしても素直な思いを
伝えられない日本兵
の葛藤をいやがおうに
描写しているのだから
ロレンスをひっぱたく時に
腰のサーベルがうっかり
ビョーンと鞘から
飛び出しちゃっても
リテイクしてないとことか
たけしのコメディアン
だというキャラクター性を
あえて省いてないんだなって
とこも面白いと感じました
たけし自身も高田文夫などに
「わけわかんない映画」
「坂本君とそう言い合っていた」
とかネタにしていたけど
絶対照れ隠しであろう
そんなたけしと坂本の
不器用な演技が映画の中で
確実なメッセージ性を
もっている点には
たけしらも衝撃を受けた
と言われています
実際たけしはこの出演以後
映画製作に興味を持ったと
聞いたことがあります
デビッド・ボウイも
当時の彼の神秘性を最も表している
映画だとノーランが評したのも
分かる存在感でした
(ノーラン最新作
「オッペンハイマー」
ではトム・コンティが
アインシュタインを
演じるそうですね)
印象的な音楽と共に
大スクリーンで見る機会が
あって最もよかった映画でした