「責任とは」戦場のメリークリスマス LSさんの映画レビュー(感想・評価)
責任とは
4K化(上映は2K)でたぶん十数年ぶりに観賞。ストーリーも台詞もかなり覚えていて自分でも驚いたが、鮮明な映像に加え、画面構成もセットや衣装も全く古びておらず、懐かしいというよりとても新鮮に感じた。(音声(台詞)の方は一部が若干浮いているように聞こえるのが気になった。軍事法廷の英語のアフレコっぽいところとか)
過去の自分の印象はセリアズと弟の物語にフォーカスしていたが、今回はたけし扮するハラ軍曹への悲哀を強く感じた。表層的には中間管理職のそれに近いが、その結果が重い。
彼が戦犯となったのは、劇中の出来事だけで考えれば、デヨンの自死や強制整列させた傷病兵の死、セリアズの懲罰死などの捕虜虐待に対して、上官のヨノイ大尉と共に現場管理者として責任をとらされたのかと想像する。
彼には彼なりの世界観、秩序意識、任務に対する責任感があっただろう。それは国際的な規範からは逸脱していたかもしれないが、当時の彼に他の選択肢が、より正しくはそれを知る機会があったのか。ラストで行く末を悟りながらも、ローレンスにこぼす「どうして自分だけが」との感慨には無力感が込もっている。
今は戦争という状況ではないが、選択の余地なく役割を果たすことを求められ、その結果責任を甘受しなければならないということについて、かつて本作を観たときには感じなかった切迫感を覚える。それは、社会での自分の立場が変わったからか、世の中の動いている方向ゆえだろうか。
実際には(戦時の兵士と違って)そこから離れるという選択肢もあるのだろうが、いざというときに自分は腹を決められるだろうか。
追伸:「ペルシャン・レッスン」の感想を書いたとき、教え子のSS士官に全く感情移入しなかったのだが、ハラと同じ立場だと思い至って、自分のバイアスに気づかされた。