「【感想文】魂の交流なんだと思う」戦場のメリークリスマス com32さんの映画レビュー(感想・評価)
【感想文】魂の交流なんだと思う
戦場のメリークリスマス、有名すぎる名曲そのメロディは知っていても映画をまったく知らないでいた。冒頭から流れ、心捕まれる。
文化の違いは思想・価値観の違いを生み、解りあうことは困難となる。この時代の日本の思想、集団意識は恐ろしく感じた。いや、現代もまだ変わっていないかもしれない。
戦争という異常の中で、人間としての心を失くさずにいることも困難かもしれない。
ヨノイ大尉はセリアズに対し自分と同じ何かとは別に自分にはない孤高な気高さを感じ、惹かれたんじゃないか。その内側から滲みでる美しさに惹かれたんじゃないか。
セリアズもまたヨノイ大尉に自分自身をみた、だからこそ救いたかったんじゃないか。
彼らのシーンで2度流れた曲『種を撒く』が素晴らしかった。
絶望的なあの状況で、彼のキスにより、どれだけ多くの魂が救われただろう。彼は彼の命をもって種を撒いた。
集団として個人を失くし、軍人としての役割のなかで生きているハラ軍曹に対し、ひとりの人間としての関わり続けていたロレンス。彼のおかげで失くさないでいられた人間としての心。お酒とクリスマスを理由にして、サンタクロースとして、ひとりの人間としてロレンスとセリアズを釈放する。
最後のメリークリスマス!ミスターロレンス!には、17の時から軍人として生きてきた彼が、個人として選択した行為(自由)を誇りに思っているようにも感じたし、ロレンスに対する感謝と敬意と愛を感じた。
異常環境の中で生まれる性愛というテーマだけでは片付けられないものがあったし、友愛や性愛は混同していったとしても、根底にあるのは愛だと思う。
セリアズはたとえ弟に対する贖罪であったとしても、大我の愛をもって人間を救おうとしていた孤高な戦士。
デヴィッドボウイは本当に美しかったし、たけしの瞳も美しかった。
各人物の放つ美しさの表現として個人的な解釈として、セリアズの美しさはデヴィッドボウイ自身が放つ美しさで十分表現されていて、坂本龍一はメイクする事でヨノイの足りない部分もしくは背伸びしている部分を表現としているような気もした。
目の美しさだけを表現したたけしも見事だなと。
大島監督って凄い人なんですね。
原作『影の獄にて』を読んでから再び観たい。