「戦争映画かと思いきやもっと私的で耽美的な物語。」戦場のメリークリスマス ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争映画かと思いきやもっと私的で耽美的な物語。
この度リマスター上映で初観賞。
坂本龍一さんの主題歌のみ知ってたけど、他はほとんど前知識なしで観た。
劇伴も含めて独特の雰囲気。
戦争映画かと思いきや、舞台背景は戦時下ではあるものの、主題はそこになく、主にハラ軍曹やヨノイ大尉と捕虜たちの閉じたコミュニティでの関係を描いた、一種の耽美的な作品だったという印象。
ヨノイ大尉がセリアズ少佐にキスされて恍惚とした表情を浮かべるシーンは、なんというか見てはいけないものを見てしまったショッキングさがあった。
観終えてみると、出会った瞬間にヨノイ大尉はセリアズ少佐に囚われてしまったのだなと思える。
あの極限の状況下で、片想い?した相手に焦がれながら自分を戒め続けた一人の青年がヨノイ大尉だったのだ。
とはいえ個人的にはハラ軍曹とロレンスの関係の方がグッときたな。ある部分では敵対しあいながらも、でもその底ではお互いのことを認め合っている信頼感のようなものを感じられて。
そして、若いデヴィッドボウイや坂本龍一の美しさはすさまじかった(坂本龍一はあんまり演技が上手ではなかったが…)。
あとはやはり北野武さんの独特な存在感がとても印象的。狂っているようで無垢さも感じられる、あの人にしか出せない雰囲気。
まさにセリアズ少佐の劇中の言葉「変な顔つきだが目は美しい」を体現していた。
収容所で酔っていた時と、ラストシーンのハラ軍曹の「メリークリスマス、ミスターロレンス」のあの優しさと狂気の混じったような何ともいえない表情はちょっと忘れられないと思う。
あと戦争を知らない世代としては、日本軍のやり方(切腹制度も含めて)はやはり色んな点で気持ちの良いものではないなと思う。戦場に身を置き戦い合った人間同士なら感じ方はまた違うのだろうけど。
感じ方といえば、この作品を観終えてみると坂本龍一さんのメインテーマ「戦場のメリークリスマス」が鎮魂歌のように聴こえるのも面白かった。
死んでいった者たち、秘めて報われなかった想い、それらへの鎮魂歌。明るさと仄暗さ、美しさが混じり合う不思議な曲だ。