「橋と兄弟」ゆれる tokyotonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
橋と兄弟
話は橋の上から兄の経営するガソリンスタンドの店員である女性が落ちてしまった。一緒にいた兄が突き落としたのか、それとも事故かというメイン。
兄はその女性が好きだけど、葬式で里帰りした弟とねんごろになった女性はその気はないし、兄の方もはっきりと告白したりしない。高い所が苦手な兄が、橋を先に渡っていった弟を追う女性を止めようと追いかけてその時落ちてしまった。
取り調べを受けて、最初は弟の方から事故という方向で人脈も使って押し出していくが、時間が経つにつれて素直で人の良い兄が事件のことは早く忘れたいという素振りを見せ始める。
女性が亡くなって間もないのに、出所してからの未来を語る兄が変貌したように見える弟は、裁判で一転し「兄が突き落とした」という証言をして、兄は刑務所行きというもの。
ラストは刑期を終えた兄に会いに行く決心をして、バスに乗ろうとする兄へ、幼い頃のように「兄ちゃん」と叫んで呼びかける。
そこで兄がバスに乗って行ってしまったか、待っていたかは観客に任せるという終わり。
見終わった感想としては役者演技が素晴らしい。特に兄役の香川照之の演技。正座して洗濯物をたたむ小さな背中だけでちょっとしたメッセージになる。
弟役のオダギリジョーの山での足運びも自信のある人間という感じでとても良かった。
繊細な演技だった。
映像にも静かで繊細な人々の暮らしが随所に盛り込まれていていい。
けれどガソリンスタンドの男性店員が、弟を責めたり激励するための配役でしかなく、これまで細やかに(これまで歩んできた背景がそれぞれあるような感じで)描写されてきた人間像が後半急に無くなる。
話の内容はもう少し踏み込んでほしかった。兄弟が相対したか、相対したとして何を話したか、二人はどんな気持ちで、これからどうなっていくのか、など観客への、想像していい展開のゆだね幅が大きすぎる。
一つの作品として作り手の答えをもう少し示してほしかった。