「独り悪に立ち向かう警察官の毅然とした正義の社会派映画にみるルメット監督の真面目さ」セルピコ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
独り悪に立ち向かう警察官の毅然とした正義の社会派映画にみるルメット監督の真面目さ
シドニー・ルメット監督らしい題材の作品で「十二人の怒れる男」の感動をもう一度と期待して見学した。昨年公開の「オリエント急行殺人事件」では、娯楽サスペンスものに手堅い演出を見せていたから、実力的にはどんなジャンルにも対応できる技量を持つ監督の印象を持ったが、やはりこのような正義について考えさせる内容が合っている。警察内部の汚職の腐敗に毅然と立ち向かう、実録社会批判の力作だった。ただ、実際の事件の経過を忠実に再現した物語の展開だったからか、映画の語りとして主人公の良心を貫徹する苦悩が盛り上がりに欠けるように感じた。それは主人公の味方であるべき恋人の理解を得られず、公私において孤立した境遇の痛々しさと虚しさが現実とする無常観の表現が弱い物足りなさである。
それにしても驚くのは、社会の悪を取り締まるべく仕事に精進すべき警察官の呆れるくらいの腐敗ぶりである。セルピコのような勇気ある善人が居ても、最後まで善人として生き抜くことが困難になっている時代の問題点もあるのではないか。正義を守り抜いた現代のヒーローを熱演したアル・パチーノと、ルメット監督の真面目な演出を観る映画。
1976年 9月2日 池袋文芸坐
辛口ですみません。共感コメントありがとうございます。因みに『12人の怒れる男たち』は大好きで、女性を入れたらもっと面白いって思っていたら、日本人の脚本家が本を書いたので、それまで穴があくほど見ました。リー・J・コッブが我が親父見えて、ヘンリー・フォンダの正義感に感動して、ウェスタンとの違いに驚き、地味な始まりの音楽が好きになりました。
監督とか俳優は考えないで、見ていますね。でも、例外的にアル・パチーノが余り好きになれないって事ですね。僕の偏見です。
追記 僕も『セルピコ』は、いつもは買わないパンフレットを買ったのを思い出しました。なにかの映画と併映だったので、 僕も同じ時期に文芸坐かその地下で見ています。長々すみませんでした。今後とも宜しくお願いします。
僕もそう思いました。アメリカってなんでこんなに怖いのか!って思ったならば、名作かもしれませんね。でも、僕の中に争い事の情景は西部劇か戦争映画だって決めていたようで、普通の生活がこんな事やっているなんて。とおそれおののきました。ゴッドファーザーとか少し前の話として見るから良かったのですが、ソニーコルレオーネが蜂の巣にされるシーンは僕のトラウマになりましたね。
すみませんでした。お気持ちは共感します。