忘れられぬ人々 : 映画評論・批評
2001年9月3日更新
2001年9月15日よりテアトル新宿ほかにてロードショー
ペキンパーの老人アクション映画のように
単館ロードショーではもったいないのではなかろうか。なぜ富士山マークがついて8月15日全国ロードショーとならなかったのか。映画マニアの愛玩物となって終わり、ではあまりにもったいない一級品のエンターテイメントである。
主人公は南方の戦場で生き残った3人の老人たちである。1人は夫婦で居酒屋を営み、飄々と悠々自適の暮らしを送っている男はバスで出会った美女に恋をする。戦後荒れた暮らしを送っていた男は今では1人静かに畑を耕す日々だ。静かに進んでいくはずだった3人の人生に、思いもかけぬ災厄がふりかかる。
監督・脚本の篠崎誠は「老人が爆発する映画」だと言う。そう、老人たちは恐るべき敵に対して戦いを挑む。ちょうどペキンパーの老人アクション映画のように。ペキンパーは誰にでも楽しめる娯楽映画だったが、これまたアクション映画のファンからすれっからしの映画マニア、年に1本しか映画を見ない熟年カップルまで楽しめる映画なのだ。最後の戦いに赴く3人の老人の背中にはジェリー・フィールディングの音楽がかぶさり、タンブルウィードが画面を横切る。東映も「赤影」なんてやってる場合じゃないよ!
(柳下毅一郎)