劇場公開日 2006年4月8日

美しき運命の傷痕 : 映画評論・批評

2006年4月11日更新

2006年4月8日よりBunkamuraル・シネマにてロードショー

緻密な構成で絡み合う偶然と運命

映画の原案は、生前のキェシロフスキがダンテの「神曲」をモチーフにして書いた3部作の第2章「地獄」だが、タノビッチ監督は、"偶然と運命"という巨匠のテーマを継承しつつ、豊かな想像力と緻密な構成力でこの遺稿を脚色し、題材を完全に自分のものにしている。

3姉妹は、父親を奪い、家族を崩壊させた過去の悲劇に呪縛されている。彼女たちは地獄を彷徨い、その底には、悲劇を招いた母親がいる。長女のソフィと3女のアンヌは、自分たちが見出した愛にすがり、過去から逃れようとするが、あがけばあがくほど、地獄の底に引き込まれていく。ソフィは、かつての母親と同じ立場に立たされ、アンヌは、過去の悲劇の遠因を作った父親の教え子セバスチャンの行為を、何も知らずに反復してしまう。一方、ひとりで母親と過去を背負う孤独な次女セリーヌは、相手の正体も知らずに、成長したセバスチャンに引き寄せられていく。

そんな3姉妹の物語はもちろん、過去の単なる繰り返しでは終わらない。偶然と運命が複雑に入り組むドラマのなかで、それぞれの立場は様々に転倒していく。彼女たちは、以前とは異なる立場から過去と向き合い、ラストでは地獄の底にささやかな希望が芽生えるのだ。

(大場正明)

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る
「美しき運命の傷痕」の作品トップへ