「原作に忠実な部分が浮いてしまった」タイムマシン REXさんの映画レビュー(感想・評価)
原作に忠実な部分が浮いてしまった
最近原作を読み直す機会があって、
この映画を思い出し書いている。
有る意味、未来編のモーロックスとイーロイの部分が原作に忠実なのだが、映画化するにあたり主人公にタイムマシンを製造する動機付けを行ったがために、未来での話が浮いてしまった。映画化のために主人公に感情移入できるような挿話が必要だったのは認めるが、原作を知らない人にとっては、導入部分から未来にいく下りが唐突に思えても仕方がないのかもしれない。
原作は、人間の技術が進化しつくした先に訪れる退化への警鐘をならすもので、労働しなくても果物が自動的に実り遊んで暮らせる特権階級の美しいイーロイ人のなれの果てと、地下で労働に従事する階級のモーロックスが暗闇でしか生きていけない存在となり、食糧難の果てに地上のイーロイを食す存在になり果てるという、人間が長年積み重ねた時間の果てに、生産性も持たず、芸術性も失い原始的に退化していく二極化した存在として描かれる。
そこでウェルズは、人間が完璧なシステムを構築したらその先に進化はあるのか、という永遠の命題を提示していた。そして星が死に瀕するときに生物はいるのか?ということまで描いていた。
原作の科学者はトラベラーとしか表現されておらず、行方不明になる。その謎が永遠に解明されないロマンとして、当時から胸に残り続けている。
ガイ・ピアースは【メメント】の頃から好きな俳優だった。彼の演技をみたくて公開当時、劇場に足を運んだ。80万年後の未来のミステリアスな部分が薄れて冒険活劇のようになってしまった感はあるが、それなりに楽しめた。
タイム・パラドックスの命題を、過去はどうあっても変えられないが魂は生まれ変わる、という輪廻転生に変化させたところと、ジェレミー・アイアンズのオリジナルキャラの存在を投入してなんとかまとめたという感じ。
原作に登場する人間のいたわりの心としての「花」が未来でもさりげなく使われているのが気に入りました。