「現在のピアニストは?」戦場のピアニスト La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
現在のピアニストは?
ナチス占領下のポーランドの首都ワルシャワで、ダビデの星の腕章を強制され、私有財産を押収され、市内のゲットーでの居住を強制され、やがて絶滅収容所へという運命に翻弄されたユダヤ人としてギリギリの環境を生き抜いたピアニストと彼を助けた人々をクールなタッチで描いたロマン・ポランスキー監督の作品です。
ナチスの情け容赦のない暴虐には胸が塞がる思いですが、その銃口に追い詰められて行く彼の運命にギリギリと胃が痛みます。そしてそれだけに、終盤の静かな感動が深く響くのでした。
でも、映画として強い力を持った作品であるだけに、2024年の1月の今それを観るのは複雑な思いがします。パレスチナの人々はイスラエル・ネタニヤフ政権の圧倒的軍事力によって今日も抹殺されているのです。中東問題は単純に誰が悪いとは割り切れないほど入り組んでいるとはいえ、その事実は変わりません。
歴史は直線的に進化・向上するのではなく、螺旋を描きながら少しずつ上昇するのだと弁証法は説いている筈ですが、本当に人間は歴史から学び得ているのでしょうか。上昇する事なく同じ所をグルグル回っているだけでないのかと暗然たる思いがするのでした。
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