「情報操作やってんのは政府だろ!」サンキュー・スモーキング kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
情報操作やってんのは政府だろ!
ニック・ネイラーの論点のすり替えはお見事としか言いようがありません。それも口から出まかせを吐くんじゃなくて、ちゃんと計算されているところが憎い。営業マンなら誰しもロール・プレイングを経験するかと思いますが、要は切り返しの妙というやつで、相手の目先を巧みに操作することなんだと思います。TV討論会でもちゃんとすり替え話法を用意してあるんだし、咄嗟に思いついた言葉ではあれほど説得力があるものではないはず。
さすがに映画俳優を使ってタバコのイメージアップを図るのは問題ありましたが、結局をそれを実行したのはウィリアム・H・メイシー演ずるフィニスター上院議員でした。死の商人はいただけないけど、銃で死ぬ人間が年間1万人超なのに対して、タバコで死ぬ人は年間47万人というのはかなり強烈なブラック。交通事故で亡くなっても遺族は車メーカーを訴えるわけどもないし・・・こうやって考えてみると、パロマやナショナルやトヨトミが可哀想に思えてくるから不思議です。
この映画は決してタバコ業界の情報操作を皮肉っているのではなく、むしろ政府の情報操作の恐ろしさを訴えているのだと思います。喫煙なんてもちろん害しかないんだし、今更ドクロマークをつけたって吸う人は吸うんです。命を縮めることなんてわかってる。喫煙率が減ってきている現在においてもそんなことをしたら、単なる弱い者いじめにすぎません。タバコを敵にしてしまえば、ほかのあらゆる害のある食品を垂れ流しにすることだってできるし、世論をタバコに引きつけておいて知らないところで悪法をごり押しすることだってできるのです。まぁ、ノロウイルスでマスコミを騒がせて教育基本法を変えてしまうようなものですね。
話題のすり替え術もさることながら、最も面白かったのは、色仕掛けで近寄ってきてニック・ネイラーの本音を聞き出したケイト・ホームズ記者のエピソードです。一発逆転、どか~んと爆弾発言をする父ちゃんを見て「coooool」と息子に言わせるなんて最高です(場面は微妙に違います)。そしてニコパッチの恐ろしさ。あれだけ貼ったら死ぬのか・・・医者の処方箋が必要だというのも理にかなってます。
ディベート術、交渉術。日本人が見習うべきことが盛りだくさんでした。外交が下手だという日本もこのままだと危険だし、インターネットを媒体にして情報操作する輩も危険です。なんとかディベート術を身につけなければ・・・
【2006年12月映画館にて】
時事ネタが当時のままで掲載、お許しを