「賛否の分かれる作品だが見る価値は絶対有りと言う映画だ!」太陽(2005) Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
賛否の分かれる作品だが見る価値は絶対有りと言う映画だ!
昨日は2001年世界同時多発テロ事件発生から丁度丸10年を迎えた日だった。改めてこの10年の歳月を振り返ると、実に様々な出来事が、国内、国外共に多発し、このテロ事件絡み及び、その他の出来事であっても、戦争・紛争、それから非常に大規模な地震と津波が世界各地で起き、合わせて世界経済の破綻の連鎖も後を絶たない。こうして並べるとネガティブな出来事ばかりだが、しかし人生悪い事のみ起こる訳では無いのと同様に、新しいミレニアムを迎えている人類の時間軸の中で、或る意味、膿出しの10年が過ぎたと考えれば、この先90年位の世界情勢は明るい方向へとシフトして行くものと考えても良いだろう?と私は思うのだ!
そうして考えるなら、この『太陽』が描いている時代も我が国に於ける20世紀最大の事件の起きた時代であったとも言えるし、第二次世界大戦と言う近代化の戦争の負の人類史の汚点とも言える最大の悲劇の時代だとも言える。この戦争を契機に、天皇陛下は神ではなく国民と変わらぬ、同じ人間であると、「人間宣言」をされた歴史が大きく動いた瞬間でもあった。皇室を描く事はタブーと言われる、そのタブー映画を仕上げたのはやはり我が国の映画界では無く、外国の映画人である、アレクサンドル・ソクーロフ監督の手による。
しかしこの映画を2006年に公開出来た事自体が珍しい事件であり、素晴らしい事でもあると思う。こうした皇族の方々の想いは、中々描かれる機会は少ないし、「本当の天皇陛下のお気持ちは一体どうなの?」と気持ちを顧みる事も中々許されないのが普通だからだ。
3、11が起きて、天皇陛下が異例のビデオメッセージ会見を国民に向けてされたのは、みなさん記憶に新しいと思うけれど、『英国王のスピーチ』もそうであるが、人間と言う側面から天皇陛下や、皇族、或いは『英国王のスピーチ』などの王室と言う存在について改めて想いを巡らせて見て行くのは、非常に興味深いものが有る。この『太陽』については、公開時は、大変大きく評価が割れ、賛否両論で、右左派に限らず、国民一人一人が、皇室に付いてイメージする処もみなそれぞれに違う、多様性な考えの自由を持つ事が出来る自由の国であると言う事が浮き彫りになったのも事実だと思う。
今日では、直接的には政治と関係の無いところでも、長い自国の歴史の中で育まれて来た皇室と言う制度が存在する日本に暮す事は、やはり日本人として、幸せな事だと私は思っている。特に今日の様に、国民の希望が反映されにくい社会の中に有って、自国の伝統を護り継承する象徴である皇室が存在している事は、日本人に無意識レベルで大きな安らぎをもたらしていて下さるように思う。今年の311の震災で、改めて日本が世界の中でどのような位置を示していたかが浮き彫りになった。この世界で人々が生きて行く事は、決して楽な事ばかりでは無い。何しろ69億人もの人々の平和を維持して行く事がこの地球では必要とされているのだから!
しかしその厳しい現実の中でも日本人が世界の人々に大切にされていたと言う事が実感出来た現在、その信用こそは、この70年前の焼け野原から、懸命に生きて来た日本人一人一人が、日々働き、築き上げて来た勤勉と言う、日本人の美徳が成し得た成果だと思う。
今回明らかになった世界の国々の人達からも大切に思われている日本人と言う幸運を噛み締め、決して過去と言う負の遺産は変える事は出来ないが、改めて日本と言う、世界でも愛される希有な国に生活出来ていると言う喜びと自覚を胸に、今回の311では、世界の人達から多くの温かい援助を受けた、その事実を決して私達は忘れずに、今後、世界の人々の温かな親切に恩返しが出来る様、また私達一人一人が、勤勉に、日本人の美徳を伸ばして励んで生きて行ける事を私は望んでいる。その日本人の霊性の祀り事を司る、皇室の御役目はとても大切な伝統である。この映画は、その素晴らしさに気付かせてくれた作品として、大切な私の映画の1本となった。