ストレンジャー・ザン・パラダイスのレビュー・感想・評価
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【ジム・ジャームッシュ監督の独特の雰囲気満載のロードムービーの秀作】
1.画はモノクロ
2.主要登場人物は3人のみ
・ウィリー(ジョン・ルーリー) 常に不愛想。
・エディ(リチャード・エドソン) ウィリーの相棒 人が好い。
・エヴァ(エスター・バリント) ウィリーのブダペストから来た従妹。不愛想。ウイリーからプレゼントされたドレスを受け取りながら、とっとと捨ててしまったり、可愛らしいのだが、”相当変な”女性。
常に、”スクリーミング・J・ホーキンス”の”アイ・プット・スペル・オン・ユー”をカセットデッキで大音量で聞いている・・。
-今では、”ストレンジャー・ザン・パラダイス”と言えば、あの濁声が響いてくる程、強烈な印象を与えられた。-
3.物語構成
1)ニューヨーク ”The New World"
ウィリーとエヴァが初めて会う。二人の噛み合わない会話が妙に面白い。”TVディナー:当時、そんなものがあるの?と思ったなあ・・”
2)クリーブランド ”One Year Later"
ウィリーとエディがエヴァに会いに行く。ニューヨークでは噛み合わなかった3人だが、エヴァは嬉しそうである。
映画館に行ったり、相変わらずダラダラ感は続く・・が、妙に面白い。
このシーンで、エヴァの叔母さん登場・・(良く喋る・・)
3)フロリダ ”Paradise"
雪深いクリーブランドに飽きたウィリーとエディはエヴァを連れてフロリダに車で出かける。
が、観ていてもリゾート感が全くないし、3人は安モーテルに泊まる。しかも、エヴァがいないことにして、2人分の料金で・・。
・誰がベッドで寝るかちょっと揉めたり
・ウィリーとエディはドッグレースに出掛け(エヴァを置いていってしまう・・)、大負けして、ウィリーとエヴァは口喧嘩。むしゃくしゃしたエヴァは海岸をブラブラしていると、”麻薬の売人に間違われ、”大金を受け取る。
ウィリーとエディが部屋に戻るとエヴァの空港に行くという書置きと大金が置いてある。慌てて空港に向かい、飛行機に乗り込むウィリー。そして飛行機は離陸していく。けれど、エヴァは何故か又モーテルに戻って来る・・
<今作の、”何が面白いのか”と問われると、なかなか難しいのであるが、全編に漂うダラダラ感と妙な会話の数々の面白さであろうか?
鑑賞当時は、ジム・ジャームッシュを観るのは”お洒落”みたいな感があったが、時折NHKで再放送される時は常に見てしまう・・。
きっと、学生時代のダラダラ感と、今作のダラダラ感と可笑しみが妙にマッチングしたんだろうと思う。>
"TVディナー"
≪JIMJARMUSCHRetrospective2021≫
スクリーミン・ジェイ・ホーキンス「IPUTASPELLONYOU」が、所々に流れエンディングでのフル。
ドレスの件は笑えるし、全てを知っているエディーのニヤつきが堪らない。
豪快で口が悪いロッテおばさんの存在感、最後の捨てゼリフも笑える。
根本的には嫌な奴だけれど、時折見せる優しさが憎めないウィリーに、負けず劣らずな態度のエヴァの冷めながらも優しい、合わなさそうな二人の掛け合いも楽しい。
ジョン・ルーリーのトッポいスタイルに渋みが漂う格好良さは、音楽も含めてジャームッシュと相思相愛。
センス溢れる全体的な雰囲気と世界観、シュールな会話などジャームッシュが素晴らしい手腕を発揮し、オシャレ感覚で真似た映画を撮るなんてケガするだけだから、ヤメときなっっ!?
完全にハマった…
ジム・ジャームッシュ監督作は「コーヒー&シガレッツ」、「パーマネント・バケーション」に続き3作目。
ストーリーはハンガリー出身でNY住みのウィリーのところへブタペストから従妹のエヴァが来る。二人は仲が悪く… というもの。
上記の2作品はそこまで自分の好みの作品ではなかった。だが、本作は完璧に自分のツボだった。ジム・ジャームッシュ監督特有のシュールな笑いが抜群に最高で且つ、モノクロで長いワンショットのカメラワークが絵画を見ているかのように錯覚させる。
たわいもない会話なのに見ていて眠くならないのは何故なのだろうか… この日常のような非日常を見ている感じが心地よいのだと思う。 各キャラが言葉に出さないだけで内に秘めているものがある感じもミステリアスでなかなか興味深い。
ハンガリー出身であることを恥じているウィリーは意図してブタペストに帰ったのか、エヴァはなぜ結局モーテルに戻ってきてしまったのか、意外と考えれば考える程深い作品。
他のジム・ジャームッシュ監督の作品が好きな人にはたまらない作品なのでは。私は鑑賞後、新たな映画の世界を垣間見れた気がして高揚感に浸っていた。
楽園以上に奇妙(ストレンジ)な存在とは?
サブカルチャーを30年以上前に牽引した傑作
今観ても本当にサブカルチャー映画だ
手作りで荒削り、しかし何かが違う空気感が充満している
何故に白黒なのか、何故にぶつ切りの暗転カットつなぎなのか、長回しを多用する狙いは何なのか
東京物語 小津安二郎の影響?
確かに競馬の出場馬の名前がトーキョーストーリーだ
そんなことよりもこの空気感、雰囲気に浸る事自体が本作の楽しみ方なのだろう
若い三人の男女、二人はハンガリー出身だ
ハンガリーは中欧にあり歴史は古いが元々から田舎の国だ
しかも当時は冷戦真っ盛りの東側共産圏ブロックの国で鉄のカーテンの向こう側の国だったのだ
今日のように簡単に飛行機で行き来きできる政治環境ではなかった
だからロッテおばさん初め登場するハンガリー人は何か特殊な事情と強力な政治的つてが無い限り、出国して、ましてや西側の中心米国本土に居住なぞできるわけがない
またもし帰国したら米国に戻れるかも極めて怪しいのだ
下手をすると投獄されるかも知れないのだ
そういう現代とは全く違う時代だったことを踏まえなければならない
もっというならば、ハンガリーは鉄のカーテンが最初に破れた国でもある
本作の5年後の89年5月隣国オーストリアとの鉄条網が開かれ鉄のカーテンの崩壊、ベルリンの壁崩壊、共産圏ブロック崩壊に至る出発点になった国なのだ
そのハンガリーの冷えきった国がこれから春に向かう微かな兆しを本作は裏側で表現しているのかも知れない
もう一人はアメリカ人
しかし彼もNYではウィリーしか友達はいない
ウィリーが米国人になりきっていた外国人と知り、彼は自分自身の都会での孤独さを知るのだ
彼も恐らく米国内の田舎の出なのだろう
つまり全員が異邦人(ストレンジャー)で、アメリカの何処に行っても孤独なのだ
ウィリーは10年もNYで暮らしハンガリー人であることを捨て忘れようとし、米国人に成りきろうと努力すればするほど孤独なのだ
その孤独感は白黒の粗い粒子の映像とクリーブランドの寒々しい氷雪でこれでもかと表現されている
終盤の温暖なパラダイスであるはずのフロリダでもそれは変わらない
寒々しいのだ
結局エヴァと言う言い訳を得て彼はハンガリーの首都ブダペストへの直行便に乗り逃げ帰るのだ
エヴァもまた結局米国にいても孤独であること、しかし独りでは寂し過ぎることを自ら悟る
それでもあんな国に帰国するよりはマシかとモーテルに戻る
エディは米国人であるはずなのに独りぼっちを嘆く
とどのつまりみんな孤独のまま、映画が始まり、終る
その三人の心証風景への共感を強くつたえる力が本作には確かにある
初めて上京して独り暮らしを始めた頃の記憶と重なる人は多いのではなかろうか?
タイトルのストレンジャー・ザン・パラダイスの意味とは何のことだろう?
楽園以上に奇妙(ストレンジ)な存在とは?
楽園とは単にフロリダではなく、自由のない故国ハンガリーから見れば自由の楽園アメリカのことだろう
ではアメリカ以上に奇妙な存在とは一体何か?
それは彼ら三人だ
それは、そんな楽園で何で孤独なのだ?
なんで自由の無いハンガリーに戻ってしまうのだ?
逃げ帰ってしまうほど懐かしの故国が恋しい楽園であるなら、そもそもなんでアメリカに移住して来たのだ?
そして自由の国アメリカに生まれたエディはなんで異邦人とつるむしかない程孤独なのだ?
それはまた奇妙な不思議な話だ
タイトルの意味はつまりその問いかけなのだ
劇中のエヴァが聴くスクリーミン・ジェイ・ホーキンスはクリーブランド出身の黒人R&B歌手というよりはブールズ歌手
掛かる曲は I Put a Spell on You 1956年のヒット
公開当時からでも30年近い大昔の誰も知らない忘れ去られた曲
監督が好きな歌手という
渋い好みだ
しかし1984年のあの当時に、共産圏の中欧から来たばかりの若い女性があの曲を知り得て好きになるかというと相当に無理な話だが、野暮は止めよう
従妹が来る。今度は友達連れて従妹に会いに行く。3人でバカンス。はぐ...
従妹が来る。今度は友達連れて従妹に会いに行く。3人でバカンス。はぐれる。以上。
特別なことは何もない、しかし何かが残る映画だそう。
それは確かにそうだ。奇妙なカット、独特の音楽、だんだん美人に見えてくる従妹のエヴァ。しかしそれが素晴らしいとは私には思えなかった。
一度は見るべき映画だとか。見たよ(笑)
日常の中の静かな非日常
突飛でドラマティックなストーリーではないけれど、静かに人間関係がほぐれていく様や情景が変わるのは普段の自分の日常を思い返したくなった。
2人の男女が出てくるけれど、あえて恋愛関係じゃないのが良かった。
本作のいとこ同士のように、異性でも様々な関係性があっていいなと思えた。
何も考えずにぼんやりと、むしろ刺激は弱く観たかった私にとってはほどよく楽しむことができた。
挿入歌のScreamin' Jay Hawkinsの「I Put a Spell on You」が映画の雰囲気を色づけしていて、思わず聴き返したくなった。
映像はシャレているといえばそうなのだが
贅沢な間でもってとくになにも起こらないまま終盤へ。かと思えば有り得ない勘違いで話が動き出す。この展開はちょっと無理すじだろう。でも大して意味あることにはならず揺さぶられるようななにかが残る訳でもない。
女優さんにミステリアスな雰囲気があり、その顛末への期待でなんとか観られたものの、やはりとくに謎はなかった。
ロッテおばさん
よそよそしい関係も次第に互いに馴れ合う。彼女が喜ぶ顔を見て満足気だ。映画館での微妙な空気を愉しむ。しかし、それぞれの心に従い、すれ違い離れていく。
何かを目指している訳ではなく、ルールもない日常。そういった生き方を否定することはなく、むしろ憧れでもある。そういった生き方は選ばない多くの現代人の心に植えつけられる。
男男女のモノクロオフビートロードムービー
ハンガリーから渡米してきたいとこのエヴァと共にニューヨーク→クリーブランド→フロリダと車で旅をする。
掃除機をかける=ワニを窒息させる。
なが回しワンカットで暗転が細かく入って場面転換する。
セリフの中に「晩春」「出来ごころ」「東京物語」が出てきた。
ボーッと眺めるように気づいたら終わってたみたいな映画だった。
ラストは人違いで大金をゲットしたエヴァが飛行機に乗るっつっといて乗らずに宿に戻ってきて幕。
ジャームッシュ節
この映画の何が良いかを人に伝えられる自信はないけど、ただずっと見てられる。何も起こらないし、固定カメラだったり、ワンシチュエーションで一つの物語が終わるのに、あっと言う間の90分。
なんの予備知識もない状態でこれを見たら、つまらないと言っちゃうかもしれない。
ジム・ジャームッシュと言う名前に酔ってるだけかもしれないし、映像のマジックにかかってるのかもしれない。
自分でもよく分からないけど気持ちよくて、オシャレになった気分にさせてくれる。
小津安二郎
大学生の時に劇場で観た記憶があり、アマゾンプライムに入ったので視聴。ストーリーは有って無きもの。しかし、白黒の画面、真っ黒なカットの継ぎ目。小津安二郎の映画のようで、さらに少しドタバタしたようなすれ違い劇は、無声映画のコメディのよう。名作でした。
評価5の映画史上最高傑作10選+α
2001年宇宙の旅
惑星ソラリス
ブレードランナー
未来世紀ブラジル
ミツバチのささやき
ブリキの太鼓
時計じかけのオレンジ
裸のランチ
ウンタマギルー
ナウシカ
もののけ姫
ストレンジャー・ザン・パラダイス
バグダッド・カフェ
ドゥ・ザ・ライト・シング
※わたしの評価の基準
期待通りで3、期待しすぎで普通でも3、期待せず予備知識もなく面白かったら3、それ以上なら4、それ以下なら2。
よっぽど酷いと1。
期待を裏切る良さがあれば4だし、完全に裏切られるほど期待を遙かに超えてたら5です。
ただダラダラと・・・、しかし。
ただダラダラと流れていくだけの映画である。
面白くないと思う人にとっては”眠くなる映画”。
しかし、ハマってしまうとやばいくらいに面白くなる。
描き出されている日常は、緊張感もなく特別な意味もない。
ただ、そこに描き出される情景が好きなだけかもしれない。
一日中、特に見るわけでもないのに流していたい映画である。
行き当たりばったりな登場人物と物語
総合45点 ( ストーリー:30点|キャスト:65点|演出:30点|ビジュアル:60点|音楽:60点 )
やたらと無愛想な登場人物たちは全く笑うことなくぶっきらぼうに最小限の会話をする。物語は行き当たりばったりで、特に目的もなくその日暮らしをする三人がひたすら描かれる。物語らしい物語もないままにそんなどこにでもある日常の描写が続く前半は退屈した。功夫映画を横一線で見ているだけの場面が何分も続くと、もうわかったからさっさと次の場面に行ってくれと願った。物語じゃなくて雰囲気を追いかけた作品なんだろうが、ここまで物語が薄いと耐え難い。登場人物がいい加減なやつらだから余計にそう思った。フロリダに行ってからの結末にやっと映画らしい展開が出てきて持ち直した。
好き嫌いがはっきりと分かれる作品だろう。描写の中に登場人物の心理がわかるようになっているが、逆に言えばそれだけであって話はとにかく進まない。最後が面白いし爽快な部分もあるのだけれども、前半がちょっといらいらしたし、やっぱり物語がはっきりしなくて好きではないかな。
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