「日本の闇に挑んだ表現者・周防正行と加瀬亮を絶賛したい映画」それでもボクはやってない Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
日本の闇に挑んだ表現者・周防正行と加瀬亮を絶賛したい映画
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日本における裁判制度が抱える問題点を鋭く批判し、法の番人たる裁判官の真実追求から逸脱し形骸化した仕事振りを告発した、メッセージ性の強い社会派映画。まず脚本が見事。演出と主演の加瀬亮が次に見事。この脚本、演出、演技は、兎に角素晴らしい。主人公が痴漢に間違えられるシーンを省略して、本筋とは無関係の痴漢事件のエピソードを挿んで、痴漢冤罪の関心を高める導入部が巧い。また、後進の司法書士に正義の理想を説く部下を左遷させて、自らが公判の裁判長に成り代わる狡猾な裁判官の暴露も興味深い。題材に対する取材力とその見せ方が練られていて感心してしまう。
法廷の過程と主人公の私生活の背景説明のバランスの良さ、オタク傍聴人の程よい絡み具合など、単調な流れに陥りやすい物語に引き寄せ飽きさせない技巧の高い脚本構成力。理知的な映画の視点が全編に行き届いた、映画監督周防正行と映画俳優加瀬亮の真価を知らしめる日本映画の秀作。日本の闇に挑んだ表現者の正義に拍手を送りたい。
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