「ままならない人生の哀切さを映像詩に昇華させた哲学SF。」ソラリス 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ままならない人生の哀切さを映像詩に昇華させた哲学SF。
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ままならない人間関係が生み出す悔恨やしょんぼりした情感を、圧倒的に美しい映像詩に昇華させた傑作だと思う。暗喩としてはスパイク・ジョーンズの『かいじゅうたちのいるところ』が似ているかも知れない。
『惑星ソラリス』の最映画化ということで、SFファンもタルコフスキーファンも違うものを期待してしまっていたんじゃないかと想像するが、やるせさ、切なさ、そして生きている限り避けることのできない諦念みたいな哲学が、ちゃんとSF的設定と結びついている。
そして母なる大地に帰還しようとするタルコフスキーに比べて、むしろ無力さを突きつけられてもなお未知のものに向かおうとするソダーバーグ版のアプローチの方が、レムの原作の精神に近いと感じている。
ソダーバーグのミニマリストとしての作風から「思ってたのと違った」系の不平不満を生んでいるようにも思うが、ソダーバーグ自身すら「やりたいことと観客のバランスを考えると制作費を使いすぎた」と反省しており、誤解や批判はやむなしなのかも知れない。
しかし自分を含めてこの映画が好きな人間はむちゃくちゃ好きであり、バリー・ジェンキンスも熱狂的なファンらしい。もうカルト映画ってことでいいんで、この作品のあるがままがもっと届くべき人に認知されてほしい。
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