ソラリス : 映画評論・批評
2003年6月3日更新
2003年6月21日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー
すべての先入観を捨てて、ソラリスの海へ
タルコフスキーのバージョンとか、スタニスラフ・レムの原作だとか、あるいは、ジェームズ・キャメロンがプロデュースをしたSF映画であるとか、そうしたすべての先入観はとりあえず捨てたほうがいい。さもないと、このマスターピースの真価が見えなくなってしまうからだ。
唯一知っておくべきことがあるとすれば、「ソラリス」はロマンティックなミステリー映画だということだ。息を飲むほどロマンティックなラブシーンや、知的な謎解きを期待して映画館に行ってくれればそれでいい。
もちろん「ソラリス」は、それだけの映画ではない。なにしろ、あのソダーバーグ監督が撮影だけでなく、久々に脚本まで手がけた渾身の超大作なのだから。シンプルなストーリーに、愛と死、罪と償い、現実と幻想、記憶とアイデンティティ、と、ありとあらゆる謎かけを詰めこんで、ゴージャスな映像とたっぷりのエモーションで優しく包んでいる。
万人向けではないが、決して独りよがりな難解映画ではない。歯ごたえのある映画を求めている人にこそ、ぜひこのチャレンジを受けて欲しい。映画館を出たあとも、ずっと心に残り続ける傑作だから。
(小西未来)