「蛭田弁護士こそが主人公であり、日本人全ての鏡」醜聞 スキャンダル あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
蛭田弁護士こそが主人公であり、日本人全ての鏡
ヒューマニズムと社会正義を真っ正面から謳うことがなんのてらいもなくできた時代
というかそれを強く欲し求められていた時代が、街の風景の中に見ることができます
ちょうど70年前、1949年の年末のキャバレーでの蛍の光の大合唱は本作のハイライトです
来年こそはちゃんとやるぞ
そんなものはどうせ誰も守れはしない
キャバレーの客全員が自分もそうだと分かっているからこそ、皆涙して合唱したのです
本当の主人公である志村喬演じる蛭田弁護士の姿は当時の日本人全員の姿だったのでしょう
法廷劇となったクライマックスで、観客たる私達はカタルシスを得ます
それは時代もお星様に成れるかも知れないという希望がもたらすものです
だから涙がでるのです
ラストシーンで背中を丸めて寒風の街中を歩く蛭田弁護士が写ります
もう弁護士ではなく元になっているかもしれません
しかし、良く観れば彼は風に吹き飛ばされたヨレヨレの帽子を拾ってまた被って青信号を渡って行くのです
吹き飛ばされた帽子は弁護士資格の暗喩でしょう
彼の背後にはもう過去の出来事になったアムールの宣伝ビラがビリビリに破れ散っているのです
彼もまた立ち直り前向きに歩みを進めていると
私達は知ることを得るのです
マスゴミという言葉があります
本作で描かれる卑劣なメディアの実態はなんら誇張でも無いどころか、本作よりもさらに深刻になっているから、そのような言葉が生まれたのです
メディアを志す若者は本作を必ず観て頂きたいと心から願います
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