「The world is yours」スカーフェイス マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
The world is yours
キューバから反カストロ主義者として追放されたトニーモンタナという青年がアメリカで成り上がろうという一人の人間のキングオブコメディ。
またこの青年が必ずしも悪と言い切れないところが味がある。やってることは凶悪だが彼には彼なりの美学があって、決して無関係の人間、子供には手をかけないという信念を貫く。そして自らの妹を溺愛するがあまり最終的には彼の相棒すら手にかける。権力を握る前は純朴な青年そのもので惚れた女の前では照れ笑いをし、家族の見舞いまでする。
ボスを消して大金を手にし事業にも手を出すが、豪邸に対して彼自身がちっぽけな存在に見える風呂場のシーンは彼存在そのものがとても空虚なものであると認識できる。
作中で何度も目にする「World is yours」とは誰に対してのものなのか。それは恐らく自分の妹に対しての感情だろう。母親から絶縁を強いられ、それでも妹になけなしの金を渡したり、悪い男から力ずくで奪い返し説教をしたり。彼は妹に対しての感情は過保護なまでに強い。そしてマニーという成り上がりの仲間を殺してまで妹を守ろうとする。それは単なる兄と妹という肉親のラインを超えるような愛憎を伺わせる。その結果は妹が兄に対して自分を欲しているんだという誤解を産んでしまった。
彼の純粋なまでの愛は度重なる破滅を招き、「世界は君のもの」という言葉の下に死体と化してしまうのは諸行無常を感じるが、生き様は十二分に感じられた。
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