星になった少年 Shining Boy and Little Randy : 映画評論・批評
2005年7月12日更新
2005年7月16日より有楽座ほか全国東宝系にてロードショー
やっぱりこの映画の目玉は象と柳楽
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(C)2005 フジテレビジョン 東宝 S・D・P
映画「誰も知らない」を見て、柳楽優弥は存在感のある俳優であることは分かっていた。それが今回、タイという大自然の中にひとりポツンと佇んで、ここまで絵になる男だったとは。カンヌ映画祭で柳楽に最優秀男優賞を与えたクエンティン・タランティーノの審美眼に脱帽だ。
映画は、象の楽園造りを目指して志し半ばでこの世を去った坂本哲夢さんの生涯を描いたもの。その背景には、動物プロダクションを切り盛りすることに精一杯で、子育てまで手が回らない母親・佐緒里(常盤貴子)との親子バトルといった家族愛も描かれているが、やっぱりこの映画の目玉は象と柳楽。
本作品のためにタイの象学校で象使いの講習を受け、約2カ月間のタイ・ロケでも、結局、念のために準備されていた吹替えの俳優も使用せずに象との共演を果たしたという柳楽。嘘偽りない象との心の交流はスクリーンを通してきちんと伝わってくる。だからこそ、音楽の付け方や、「もう少しこの感動的なシーンを見ていたいのに」と思ったところで場面が切り替わったりと、ちょっとせせこましいのが残念だったが。何はともあれ、カンヌ男優というプレッシャーを自らはねのけた柳楽の奮闘に拍手を送りたい。
(中山治美)