世界 : 映画評論・批評
2005年10月18日更新
2005年10月22日より銀座テアトルシネマにてロードショー
世界を見晴らしながら世界に閉じこめられ
中国には、世界中のモニュメントを園内各所に配置したテーマパークがいくつかあるのだそうだ。「世界公園」とか「世界之窓」とか呼ばれていて、例えば日本の淡路ワールドパークONOKOROなどとは規模が全然違う。
この映画は、その「世界公園」が舞台となる。まさに世界を一望の下に見渡すことのできる場所。例えばその昔から、人はそんな場所を求めてきたように思う。そして今や、人工衛星から送られてきた世界の映像を、私たちは自宅のテレビモニタで見ることができる。そんな現代社会の馬鹿馬鹿しくシリアスな縮図が、その「世界公園」にはある。
この映画で示されるのは、そんな世界を見晴らす場所で働く若者たちが、その「世界」に閉じこめられているということだ。誰もそこから抜け出すこともできない。「世界公園」の外側にも延々と、「世界公園」が広がっている。そんな現代社会の姿である。つまり、北京という一都市の具体的な若者たちの物語は、それを見る私たちの世界に広がってくる。その閉塞された世界の重苦しい空気を私たちも吸っていることに、気づかされるのだ。誰もが自由に何でもやれてどこにでも行けるはずの日本が、いかに閉じられていて不自由かを、この映画は教えてくれる。彼らのその後の物語を作るのは、私たちであることを。
(樋口泰人)