「純映画」初恋のきた道 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
純映画
クリックして本文を読む
甘いセリフも抱擁もなく姿・表情だけで想いが描かれる恋愛映画は初めて観ました。
回想という手法も見事です、思い出は心の中で美しく浄化されるものですから。回想というと普通は過去の場面をセピアやモノトーンにするのですが本作は思い出がカラー、それはそうでしょうメインなのですから、四季の映像の美しさ、赤色の活かし方も素晴らしかったです、現在の場面は冬で悲壮感と相まって白黒画面が生きていました。
チャン・ツィイーのデビュー作、どうりで初々しくも麗しい、まさに鄙(ひな)にも稀な美人さんです。恋路を阻む偏屈な村人が出てこないかとはらはらしましたが登場人物も善人ばかり、貧しい中での健気さが一層胸を打ちます。
陳腐な邦題が多い中、「初恋のきた道」とは秀逸、凄いセンスですね、どんぴしゃりです。
小説における純文学という表現を借りるなら、まさに純映画、万人の魂を揺さぶる一級の芸術作品でした。
チャン・イーモウ監督は本作はイランのアッバス・キアロスタミ監督へのオマージュと言っていますがアッバス監督は小津安二郎監督のフリークとしても有名ですから、私たちと感性が近いのでしょうか人種を超えて心が響きあうという好例なのかもしれません。
老婆心ながら頭でっかちになる前に若い人たちに観ておいてもらいたい映画のひとつです。
コメントする