「言葉は誤解しか生まない事を象徴した面白い作品」十二人の怒れる男 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉は誤解しか生まない事を象徴した面白い作品
内容は、殺人事件における陪審員制度の会議室。18歳の父殺し疑惑を掛けられた被告が有罪か無罪かを密室で話し合う怯える十二人の陪審員制度の話殆ど会話だけの物語。
印象的な台詞は、『What's your name?』最後の最後に名前を聞く場面。夕立の雨上がり法廷を後にするあの場面は、カタルシスの解放とオシャレだなあと思わずにはいられませんでした。名前は無くとも個性を見せる素晴らしい演出と詳細な性格まで想像してしまいそうなキャラクター構成には頭が下がります。
印象的な場面『not guilty・・・』と最後の無罪を表明する場面です。密室の会話劇の盛り上げ方も三幕構成に忠実な面白さで、サスペンスとしての伏線の貼り方が素晴らしい。開始22分の息子と喧嘩してそれ以来不仲になった最後の有罪支持者が、最後では自分の感情と被告となった少年とを重ねて感情的になる自分自身を見つめ直す場面は、ここで伏線が効いてくるかぁと唸りました。十二人の男がそれぞれの背景で怒っていて、問題に対する論理のすり替えが偏見とした形で現れる。見ている方にも偏見に対する箴言をされている様で身につまります。
印象的な立場は、終始感情を排して真実を追い求めようとしたディビスの姿勢です。
そのデイビスが『個人的な偏見を排除するのは難しい。偏見は真実を曇らせる。誰も真実は知らない。』だから真剣に考えてなれけばいけないと言う姿勢が複雑で面白かった。
終始密室での会話劇であり場面変化はあまりないもののこれだけ複数の人を適格に、又印象的に表現し緊迫し息苦しい空気感まで表現した素晴らしさに驚きまさに名作です。見ているこちらまでじとっとした暑苦しい感じが伝わってきましたし、だからこそ終わった後の清々しさの中で、個人的に何処かしらモヤっとした感じが伝わる面白い作品。