「今まで感じたことのない不思議な気持ち」パフューム ある人殺しの物語 77さんの映画レビュー(感想・評価)
今まで感じたことのない不思議な気持ち
好みは別れるかと思いますが、私は大好きな作品です。
好き、というより強ーい引力に吸い寄せられるように異様に惹かれるという表現の方がしっくりくるかも。
まさしく香りみたいに強烈に記憶に残るというか1回観ただけで忘れられなくなる印象深いお話です。
また観たいとは思わないのにお気に入りの映画の1本になるというのもこの作品だけかも。
とにかく色々初体験でした。
色んな映画を観てきたという人には特に観てほしいです。
まず映像で「香り」に焦点を当てる発想とそれを形にしたこと、
そして発想負けになってない高い完成度には映画の新しい可能性を見た気がします。
“臭い”から“匂い”までまるで画面から伝わってくるようでした。
ありとあらゆる記憶を呼び覚ます香りの凄さを初めてまじまじと考えました。
終わった後には目を閉じて空気の匂いに神経を研ぎ澄ましてみたり、自分の体を主人公みたいにこれでもかというくらい嗅いでしまいましたw
普段の無意識を意識するのって面白いです。
なんといっても終始芸術的。
エロもグロも下品なラインは絶対に超えずその映像美には最後まで圧巻されっぱなしでした。
この作品の最大の魅力はまるでずっと美術館にいるかのように美しいこと。
空をみて綺麗とか花をみて綺麗とかの類じゃなくて、もっと生々しい美しさ。
暗くて怖くて不気味で(本筋に関係なく主人公の関係者が当たり前のように亡くなるのなんて特に悪趣味)、でも美しい。
連続殺人犯のお話なのに、途中からは主人公がどうか無事に13人あやめられるようにと祈るような気持ちになるっていう
普通ならありえない思考にすら陥って自分でもその初めての感じにびっくりしてしまいました。
それほど映画が進むにつれ主人公同様あの香りへの興味が抑えられないようになるのです。
そして冒頭シーンへ繋がると思っていた予想をいい意味で裏切られ、問題の700人乱交シーン。
撮影現場の様子が気になりますw
そこでも全くエッチなエロじゃなくてただただ官能的な美しさ。
そこで愛も善悪も教えられることなく大人になった主人公は初めて自分の中の気持ちに気付いて涙。
本能、本質、教育、愛情、いろんなことを考えさせられる涙でした。
そしてグロくも主人公にとっては償いであり最大の幸せなのかもしれないこれまた問題のラスト。
私はあの終わり方とってもいいと思います。
主人公を食した人たちやあの1摘が落ちたパリの街のその後(現実でもあの腐敗した町が今ではファッションの都)が気になる余韻も相まって深ーい呼吸をしてしまいました。
あの伝説の香水、すごく怖いけどすっごく嗅いでみたい。。
ベン・ウィショーの演技が素晴らしかったです。