「匂い=本能的なもの」パフューム ある人殺しの物語 Ana-phylaxisさんの映画レビュー(感想・評価)
匂い=本能的なもの
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獣のように産み落とされ親の愛を知らずに育った男が、匂いをたよりに愛を求めるが
しかしそれも狩りをするように動物的で心がない。香りにとりつかれ、たどり着いたのは親の愛を一身に受けて育った少女。
かくして彼の求める至高の香水は完成した。
その香りを嗅いだ全ての人が本能のまま獣のように愛し合う。
最後には溺愛するわが子を殺された親すらも、彼の香水の前に恍惚となりひれ伏す。
その後、彼は自らの意思で産まれ故郷に戻り、香水をかぶり、獣のように食い殺され、香りのように跡形もなく消える。
非常に気持ちの悪い作品だが、唯一、人間的温かみ、可笑しみを添えてくれているのが小物の調香師を演じるダスティン・ホフマンだ。彼は人間臭い役が本当に上手い。私の中で彼がこの映画の救い。
何より気持ちが悪いのは、主人公が執着する「少女の匂い」が具体的にイメージできてしまうこと。子供の頃の記憶で、未だに同じような匂いを探し求めている。
よく匂いは記憶に直結するというが、そういった記憶に訴えかけてくる作品。
人に勧める気は起きないが、上質な映画の雰囲気はたっぷりある。
無理やりに解釈すれば、人間もただの動物ということか。親の愛ですら、圧倒的快楽の前には勝てなかった、と。
広場のシーンは、事実だけ並べれば間抜けで笑えるのに、映像にすると鳥肌モノの気持ち悪さだった。
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