劇場公開日 2005年10月15日

「天国編は怠慢で傲慢な受け手へのご褒美」アワーミュージック 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0天国編は怠慢で傲慢な受け手へのご褒美

2023年2月15日
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菊池成孔が「ゴダール作品なのに通常の劇映画と同じ規範において面白い」みたいなことを言って本作を褒めそやしていたのでそれなら俺も…と見てみた次第だが、結局いつものゴダールじゃねえかよというのが正直な感想。何度寝落ちかけたかわからない。

映画が運動ではなく言葉によって占拠されていくことへの反感と、それでも言葉がなければ映画は先に進んでいかない、そういう複雑な時代に差しかかりつつあるという諦観。映画という芸術あるいはメディアに対するゴダールのアンビバレンツな感情が、運動だらけの地獄編と、言葉だらけの煉獄編の対比の中に語られている。

ただ、そういう構造的なアレコレはなんとなく理解できるものの、劇映画として面白いかと言われると首肯しかねる。初期ゴダールに散見された、思わずハッとさせられるような官能的なカットも少ない。というかそういうカットはラスト数分の天国編に小さくまとめて格納されていた。これのために俺は80分を耐えてきたんだなと思った。怠慢で傲慢な受け手へのささやかなご褒美だ。

因果