劇場公開日 2006年1月28日

オリバー・ツイスト : 映画評論・批評

2006年1月24日更新

2006年1月28日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー

猥雑で狡猾な小悪党どもにゾクゾク

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手垢のつきまくったディケンズの名作を、なぜまた映画化? 理由は「7歳のわが子に見せたい」からとか。孤児オリバーに、自分の悲惨な少年時代(アウシュビッツで母を亡くして流転)を重ねたということもあるだろう。というわけでポランスキー版オ「オリバー・ツイスト」は、原作を手堅くまとめた印象だ。

基本となるのは、金持ちや権力者が私腹を肥やし、弱者が搾取される原始資本主義の欺瞞をカリカチュアした世界観。19世紀ロンドンの街並みを再現した監督の執念が、ここでモノを言う。その中で、過酷な運命に翻弄される9歳のオリバーは、あくまでも受け身キャラ。この作品に欠かせないのが、けなげでいたいけでかわいい主役だ。やせっぽちな「憂い顔の天使」、バーニー君が条件をクリア。「不憫風」をぴゅーぴゅー吹かせ、観客をハラハラさせてくれるのがうれしい。

とはいえこの主人公、面白味には欠ける。それに比べ、猥雑で狡猾な小悪党どものゾクゾクさせてくれること。スリの少年ドジャーも魅力的だが、ベン・キングスレー扮する少年窃盗団の元締め、フェイギンが入魂の怪演! せこい悪党のくせに好々爺のような、善悪入り組んだこのキャラが、いままでになく哀れ。それまで感傷を避けてきた映画が、最後のオリバーとフェイギンとのやりとりで、原作の持つメロドラマ性を取り戻している。

若林ゆり

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