「覗き見る映画」誰も知らない 上田さんの映画レビュー(感想・評価)
覗き見る映画
14歳の柳楽優弥さんが非常に良いお顔であった。ずっとお顔を眺めていた。柳楽さん含め子供たち全員が変に作っていないのも良い。
柳楽さん演じる明は最初はわりときちんとした子供という印象。勉強もするしお母さんの言い付けも守る。下の子の面倒も見る。しかし大して幸せそうではなくどこか儚げでもある。恐らく賢い子供で、現状が決して正常とは言えないと理解しているのだろうと感じさせるある種の高潔ささえある。
そこから状況が変わって欲に走り(所詮子供だから大した欲望ではないが)、その後事件が起こりラストまで、大きく表情が変わったりキャラクターが変わったりするわけではないが、服がボロボロになっていくにつれて彼の行動も「きちんとさ」を放棄していく。しかし儚さ高潔さは残したまま心の置き所が無いような様子でそこいにる。佇まいも非常に良い。親さえそばにいれば、お金さえあれば、彼はいつでもきちんとした彼に戻れるのだ。ドキュメンタリー風の映像の中にある彼や子供たちの表情の美しさはそこだけリアリティがなく、荒れた部屋の中でキラキラと笑う様子などはやや異様でもある。
YOUさんの、語尾に♡をつけてそうな舌足らずなしゃべり方もまた罪である。子供たちからしたら母親が完全にいい人に見えるもの。私が子供だったらお母さんがこんなんだったら大好き―!と思って騙されてしまうだろう。この方も恐らくそんなに作っていないように見える。
終始何もかもが大げさではなく、毎日その場その場で感情の揺れや思うことはあれどセンセーショナルに盛り立てることなく、静かに彼らの日常が過ぎていく。子供は成長し、大人は自らの安寧を守り、命あるものは死に、植物は成長する。それを間近で覗き見る映画であった。