「リメイクとしては決して駄作ではない。」日本沈没 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
リメイクとしては決して駄作ではない。
1973年製作のオリジナル版(元作)を観終わったので、そのリメイク版として鑑賞することにした一本でした。
リメイクというと、元作のストーリーだけを頂戴して、出演者を有名俳優にただ置き換えただけのような作品も少なくないなかで、元作の骨組みを活かしながらも、なお独自の「味付け」に成功しているという点では、リメイクとしては、決して駄作などではなく、むしろ成功作と言えるのではないかと思います。評論子は。
本来のリメイクは、焼き直しではなく、翻案であるべきだと、評論子は思うので。
評論子が思う本作の翻案…独特の「味付け」というのは、まず、元作は「日本列島が(物理的に)沈没してなくなってしまう」というストーリー立てに終始していたところを、本作では沈没阻止のための方策という新しい視点を取り入れ、そのことで「最後はハッピーエンド、拍手をシャンシャン」というパニック映画の「お約束」に持ち戻したこと。
元作の「いつの日にか復興を」という終わり方は、1980年製作の『復活の日』にも受け継がれたようで、そういう結末は日本人好みなのかも知れませんが、パニック映画の常道として「安心して見終わることができる」という条件は、その筋の映画作品としては小さな要素ではないと思います。評論子は。
「沈没阻止のための方策」という点も、一度は失敗はするものの、起死回生の打開策が最後には奏功する…というパニック映画の「鉄板ストーリー」が、本作ではちゃんと活かされたことを挙げることができると思います。
また、人は生きていく上では色々な運命に遭遇するものですけれども。それを、これから実を結ぶであろうカップルと、20年も前に破綻してしまったけれども(破綻の直後はどうだったのかは本作の描くところではありませんでしたが)お互いがお互いに憎悪を募らせている訳でもなく、自然に向き合うことのできる(円熟破綻の?)カップルとが、本作では対置的に?描かれていたことも、元作にはなかった「味付け」だったと思います。
国土が沈没してしまうかという巨視的な変動の中で、市井の生活を送る人間にとっての(当事者にとっては大きな変動でも、地球規模の変動に比べれば)微視的な変動との対置といったところでしょうか。
まぁ、確かに色恋が前面に出すぎているという、他のレビュアー氏が指摘するような嫌いもない訳ではありませんけれども。
SF作品というのか、パニック映画という視点では、元作とはまた次元を異にする、まずまずの良作には仕上がっていたと評することができるのではないかと思います。評論子は。