「 F.X.トゥールの小説が原作となってるが、実はそれぞれが独立した...」ミリオンダラー・ベイビー 疲れたおじさんさんの映画レビュー(感想・評価)
F.X.トゥールの小説が原作となってるが、実はそれぞれが独立した...
F.X.トゥールの小説が原作となってるが、実はそれぞれが独立した小説である『ミリオンダラー・ベイビー』と『凍らせた水』を合体させたシナリオ構成となっている。
『凍らせた水』の主役であるスクラップ(フリーマン)が語り手となり、 『ミリオンダラー・ベイビー』のトレーナーであるフランキー・ダン(イーストウッド)と同じジムで働いているという設定にすることで話を融合させている。弱いお調子であるデンジャー(バルチェル)の登場に違和感を感じた視聴者がいるだろうが、彼は『凍らせた水』の主役の1人であり、省略できなかったのだろうと思われる。
主人公が尊厳死を選ぶというプロットのため、万人受けする映画ではない。このような悲しい結末を受け入れられない視聴者は一定数存在すると思われる。が、単なるサクセスストーリーにしなかった事で、いつまでも心に残る映画となった。タイトルマッチ戦で急転直下するという設定も残酷ではあるが、光から闇への急展開としては最も効果的なタイミングだろう。主人公は尊厳死を選ぶが、一定の幸福感に包まれた旅立ちであったと願いたい。
なお、原作小説内で『マ・クシュラ(MO CUISHLE) 』はゲール語の「マ・クイシュル」で「秘蔵っ子・血の仲間」と言った意味になると翻訳されている。海外のWikiにはアイルランド・ゲール語の「mo chuisle」を音訳した1910年のアイルランド歌「Macushla」があり、直訳すると「私の心の鼓動」を意味する「a chuisle mo chroi」というフレーズが歌中で使われていて、この歌の影響で、以降「mo chuisle」は「最愛の人」「恋人」を意味するようになったとの記載がある。
また、悪役として登場する青い熊ビリー(ルシア・ライカ)は小説版ではロシア人女性として描かれている。このライカ(オランダ人)は撮影当時「世界で最も危険な女性」と評される程の最強女性格闘家で生涯成績はキックボクシング36戦35勝(25KO)1引き分け、プロボクシング17戦17勝(14KO)0敗とのこと。