「生きるとは」ミリオンダラー・ベイビー とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
生きるとは
簡単には答えの出ないイシュー。
太く短く、充実した人生がすべてなのか。
人の重荷になることに耐えられないように育ってしまった人。
どんな姿になってもそこにいてくれればいいと思える関係だってあるのに。
『潜水服は蝶の夢を見る(実話の映画化)』のように、最悪の状況を越えたところに見つかる何かだってあるのに。
フランキーが、マギーが、こういう生い立ち・性格でなければ、また別の結末がまっていただろうに。
親友の片目に負い目を持つフランキー。
そんなフランキーに「やり切った、あれでいいんだ」というスクラップ。でも、輝いていたスクラップの今の生活は…。
家族に認めて欲しかったマギー。代わりに彼女を認めたもの。ボクシングありきの繋がりと思い込んだマギー。ボスの心を読み間違えたマギー。
見捨てられて忘れられた存在になるより、人々のぬくもりを感じたままの時で止めたいと願う生い立ち。
若いボクサーが成長していくのを見守れるフランキーやスクラップとは違う。
デンジャーは居場所を見つけた。マギーの居場所は…。
意外だったのは、神父がちゃんとフランキーの心を理解していたこと。
何故、教会に来るのか。
神を信じ、救いを求めながらも、運命をゆだねられないフランキー。
神がフランキーの大切な人々に課す試練を受け入れられずに、神の存在をあれこれ理屈で理解しようとする。
後ろ指さされるかどうかなんて薄っぺらいこと。
繰り返しマギーに言う言葉。「自分を守れ」」。
ボクシングジムを経営しながらも、致命傷を負わせてしまうのではないかと何気に腰が引けているフランキー。
大切な人を守り切れなかった。
せめて、大切な人の心・尊厳(プライド)だけは守りたかった。自分の総てをかけて。
悲しかったのは、二人をこの世につなぎとめるものがなかったこと。神すら、つなぎとめる役にはならなかった。
自分の人生をかけられるものを見つけた人の快進撃。
その中に散りばめられる、ラストを理解するための伏線。
見事。
そしてスワンクさん。ボクシングの様も見どころだが、かなり強い精神安定剤を体に入れられた時の表情。凄すぎる。
そして、どこか常にイライラしているフランキー。自分への罪悪感・怒り?それでいてスクラップやマギーに示す情愛。その複雑な愛をちょっとした表情等で示すイーストウッド氏。
そして、その存在感だけで、これからどんなエピソードが起ころうが揺らがない”場”を作り出すフリーマン氏。
見事。
これだけのテーマを持った見ごたえのある作品。
でも、再鑑賞にはかなりのエネルギーがいる。なので-0.5。