殺人の追憶のレビュー・感想・評価
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愛の嘲笑
グエムルも母なる証明もそうなんだけど、執念を持って突き進む主人公に対し、最悪の結果を与えるんだよな。なんて楽しい監督だこと。
本作は母なる証明とは違い、執着、執念を最後の最後まで嘲る。ただ、ひたすら愛すべきキャラクターとして描いており、話は大して面白くないが、ソンさんほか登場人物が面白すぎて、ゆるーいシーンがホントはとても楽しい映画になっているわ。こりゃホント批評家さんの言う通り、目の離せない映画だぜ!
居眠り大好きな俺にとってはDVDサマサマ。やっぱり一部国民性ご都合主義みたいなのをところどころ感じるが、それでもこの映画は面白いと思うよ。
人間の抱える闇をじっと凝視した傑作
長編二作目にしてポン・ジュノの名前を広く知らしめるきっかけとなった本作は、韓国で記録的大ヒット。80年代の未解決事件の顛末が気になって劇場に足を運んだ人もいるだろうが、それ以上に二人の全く異なる性格の刑事が織り成す人間ドラマとして完成させたところに意味がある。未解決ゆえにこういうミステリーに伴う真相解明のカタルシスは得られないものの、むしろ本作が描き出そうとするのは、ちょうど真っ暗闇のトンネルの先に何が見えるのかを、刑事たちがじっと凝視するイメージ。それを観客にも体感させて背中のあたりをゾゾッとさせる。それはある意味、人間の姿をした悪魔と対峙する人々のあまりに無力で無防備な姿でもあるかのよう。このイメージは本作中に何度も現れ、冒頭の排水溝に始まり、釘が刺さって空いた脚の丸い穴、絆創膏で塞いだ女子生徒の傷へと受け継がれるのも興味深い。ダイナミックな映像と岩代太郎の音楽の融合ぶりも素晴らしい。
【被害者は3度殺される】
本作は、1986年10月から1991年4月の間に韓国の農村、華城地域で10件以上発生した連続女性殺人事件(華城連続殺人事件)を題材にしているそうであり、2003年(事件発生より17年後)の本作公開時には未解決のままだったようです。
地元警察の中年刑事、パク・トゥマン(ソン・ガンホ)、その相棒で若手の暴力担当、チョ・ヨング(キム・レハ)、二人の上司、ク・ヒボン課長(ピョン・ヒボン)。そこにソウルから応援として若手刑事ソ・テユン(キム・サンギョン)が赴任してきます。この映画はこの4人の警察官の無能っぷりを延々と描き続けます。4人は次々にもたらされる何の確証もない情報に翻弄され続け、最後まで真犯人にたどり着くことはできません。当初は理性代表のように見えた都会派ソ・テユンまで、最後は闇落ちし、無実の容疑者に向けて拳銃を発射します。この刑事たちがあまりにも無能すぎて、だんだん滑稽にすら見えてきます。
一方、被害者である若い女性たちの遺体の描写はリアルで生々しさを感じさせます。身体にたかっている蟻、下着で縛られた手足、陰部から取り出される桃のかけら…。この遺体の見せ方が、実に絶妙です。観客の怖いもの見たさと下衆な好奇心を満足させつつ、不快感を催さないギリギリのラインを攻めています。
正義感あふれる無能な刑事たちの「危険さ」、暴行され殺された若い女性の遺体の「残酷さ」、見えない真犯人の「不気味さ」、この3点でこの映画は観るものを引き付けます。
Wikipediaの記載によれば、ポン・ジュノ監督は「映画を作ったとき、とても興味深かったし、犯人についてもたくさん考えていた。」と述べているそうです。監督の目論見は当たり、実際の連続婦女暴行殺人事件を題材とした娯楽映画である本作は2003年に韓国で最も多くの観客を動員した映画となり、数々の映画賞を受賞しました。
フィクションと断れば、いくら実際の事件を参考にしていたとしても、なにを描こうが自由です。ですが、事件には被害者遺族や実際に事件を担当した刑事たち、当事者が存在しています。その当事者たちは、この映画を観てどんな感想を抱いたのか聞いてみたいものです。
物語としては何の解決もない脚本ですが、この映画は観客が「見たいもの」を見せてくれます。その意味でポン・ジュノ監督は韓国の大衆心理を熟知している監督と言えます。本作に出てくる、普段は真面目で家族を愛しているのに殺人現場で自慰をして捕まる男。あれがポン・ジュノ監督の考えるわれわれ「観客像」なのではないでしょうか。猟奇的な殺人を扱った映画を喜んで観に来る観客の心理と自慰男の心理と真犯人の心理はある部分で同じだと、監督は考えているのでは。もしかしたらこの監督は警察も観客も全く信用していないのかも知れません。
被害者の女性たちは、まず犯人に殺され、遺体発見現場に群がるマスコミや見物人に殺され、その後映画となり監督とわれわれ観客に殺され、3度殺されたことになります。
焦り
連続殺人事件を解決しようとする刑事の焦りがテーマ。
片田舎で起きた連続殺人事件を捜査するが、一向に解決ができない刑事たち。
冤罪に持っていこうとする状況を諫めていた刑事が、犯人が見つからず、次々と犠牲者が出てくる苛立ちから、ついにはピストルを向けたことは、人が焦りから変容してしまうおそろしさが描かれている。
最終的には、犯人は見つからず、今も生きていると分かる終わり方は、無力さを感じさせられた。
ポン・ジュノ監督の作品は、パラサイト・母なる証明と3作目になるが、どれも完成度が非常に高い。
特に、感情が揺さぶられる映像や音楽が印象深い。
どの作品も、後味があり、個人的には好みである。
問題意識の盲腸線
『ほえる犬は噛まない』でも思ったが、ポン・ジュノの映画は決して単線的な形を取らない。しかし複線というわけでもない。もちろん主題のようなものはあるのだが、その節々から無数の盲腸線が伸びている。
本作の主題は連続殺人事件をめぐる警察の狂気的奔走とその空転にあるが、細かく見ていくと、さまざまな問題意識が織り込まれていることがわかる。
たとえばパク刑事とソ刑事の対比。パク刑事は誤認逮捕も辞さない腕っ節ひとつで刑事の座に這い上がった叩き上げの身である一方、ソ刑事は大都会ソウルからやってきた4大卒のエリートだ。
韓国は日本以上に学歴競争が激しい。「受験戦争敗退者はチキン屋になるしかない」などという洒落にならないブラックジョークが囁かれるほど。パク刑事とソ刑事の折り合いの悪さは、韓国の厳然たる学歴格差に由来するルサンチマンや軽蔑に根源をもつものであるだろう。
二人の緊張関係は数多の捜査を経て次第に寛解していくのだが、ようやく歯車が噛み合ったかと思ったまさに次の瞬間、アメリカから犯人の精液の鑑定書類が届く。
ソ刑事はその結果を見て深く落胆するが、パク刑事にはその理由を瞬時に理解することができなかった。なぜなら書類は英語で書かれていたから。
本筋とは関係のない、ほんの些細なシーンではあるのだが、私は思わず嘆息してしまった。そして本筋の物語が具体的な解を得られぬまま幕を閉じたように、この学歴的な問題意識もまたどこかにうまく接合されるということがない。
もちろん、学歴の問題はほんの一例であり、見方を少し変えるだけで他にもさまざまな問題意識を発見できる。地方/都会の格差、韓国/アメリカの格差、女性の地位、障害者差別、その他諸々。そしてそれらの盲腸線のどれもが、帰結を持たないまま宙吊りにされる。
ラストシーンのパク刑事の表情はとても示唆的だ。数十年前の地獄が今なお続いているという恐怖と絶望。ショットは彼の表情を真正面から捉えている。パク刑事はじっとカメラを凝視している。我々を凝視している。
その瞬間、映画の中の世界は我々の現実と直結する。終ぞ解決をみることのなかった悲惨な物語が、その無数の盲腸線ごと我々に突きつけられる。あとはお前たちでどうにか考えてみろ、と言わんばかりに。
文芸の役割は受け手に何らかの主体的な思考を促すことに一つの本質がある。ポン・ジュノの作品が愛されてやまないのは、上記のような細やかな問題意識と大胆不敵な挑発性があるからに他ならないだろう。
肉食獣
ポン・ジュノ監督作品は3作め。女性が暴行されるので嫌な気分になるけど、映画は笑えるところもあり、ハラハラもするし、ポン節サクレツ。
韓国の田舎では、あんな暗い、ひとけのない道でも、女性が独り歩きをするの当然なのだろうか。今まで何もなくて平和だったかもしれないけど、村で殺人事件が起きてるんだから、ちょっと用心して欲しいな。もちろん、一番悪いのは犯人だけど。焼肉屋でニュース見ながら「チョン切っちゃえばいいのに」と言った人に、激しく同意しますよ。なきゃー悪さもできないし、切られると思えば、やる気も失せるでしょう。
人手が足りず、捜査が進まず、警察を嘲笑うように犯行が続いていく。焦る刑事達が、目星をつけた容疑者に拷問し、自白を迫る。飛び蹴りもマズいが、逆さ吊りは完全にやりすぎよ〜。
犯人の顔は映さないが、こいつは狩りでもしてる気分なのだろうか。雨の草むらでずーっと隠れて、女性が通るのを待つ。近くまで来たら瞬時に襲いかかる。音もたいして立てない。まさに肉食獣のスタイル。男やおばあちゃんが来ても、絶対に気配を消してやり過ごしていたに違いない。目撃されたら足が付くし。この、忍耐強さと慎重さ、もしかして特殊工作員だったんじゃ? 韓国には兵役義務があるので、訓練を受けた奴が、兵役中のトラウマかなんかで人格が歪んで、こんなことしたんじゃないだろうか。あ、元特殊工作員じゃ、手が柔らかいわけないか。現実では犯人は別件で服役してたそうで、自白しても過去の事件はすでに時効だとさ。事件のあらましを調べてみたが、まさにケダモノの所業。今からでもチョン切って欲しくなるわ。
普通の顔か。ということは、女のようにすべすべしたヒョンギュではないのか。17年経っても、そこそこイケてるおじさんじゃないかと思うし、それなら通りすがりの女の子の印象に残るだろうから。それとも、往年の美青年の、見る影もないほどの変貌? ソ刑事に後ろ手に手錠をかけられ、暴行を受けるって、ある意味、被害女性たちと同じだな。彼も被害者ということだろうか。
ソリョンが中学生とすれ違って、物音に振り返る。が、中学生の姿はない。ほんのわずかの違いで、ソリョンが殺されていたかもしれない。でも、彼女はきっとそれを知らないだろう。今日が無事に終わっても、明日が確実にあるかどうか、誰もわからない。
BS12の放送を録画で視聴。
過去のベストを引きずるべきでない
「韓国映画史上ベスト!」という評価が多い本作。
当然パッと見はサスペンス映画なのだけれど、そしてそれだけで優秀な映画なのだけれど、そうじゃないのが歴史に名を刻む理由なのだろう。
韓国国民なら誰もが知る(のであろう)事件を題材に、ジャーナリストよろしく1980年代当時の韓国社会の闇を描く作品。この「闇」が連続殺人事件だけを示すのではなく、同時に警察の所業を糾弾するあたりが素晴らしい。今の時代に観ると、取り調べコントに見えるぐらいに現実的でない内容。数十年前にこんな時代があったという事実が、シリアルキラーの存在と同じぐらいに恐ろしい。
結局捕まらない犯人から殺意の理由を聞くことはできないのだが、警察側の闇は別である。どうにも憎めない人柄や苦悩。「こんな人いるよね…」なんて感想を持って仕舞いがちだけれど、ある意味そんな普通な人たちが、焦燥的に次次と国家権力を傘に暴力的に事件を解決しようとしていく。
最後の少女が語る「普通の顔」が殺人を繰り返してきたのと同様だ。闇とは常に自分の隣り合わせにいるものなのだろう。このテーマを20年近く前に劇場で流した事実は間違いなく「韓国映画史上ベスト」だったのだろう。
そう、「だった」と表現したい。
過去形こそが、ポン・ジュノ監督への最大の賛辞だと思うのだ。
軍政下の閉塞感とやるせなさ
全斗煥政権化1980年代の韓国は、近過去にかかわらず、自分の想像を超える管制と緊張感。ソウル郊外という設定だが、これも想像以上に田舎感あるし、生活環境も近代化されていない印象。ましてや警察は目を疑うばかりの拷問と自白の強要。灯火管制や防災訓練、民主主義とは遠い。
そんな制限下で発生した猟奇殺人は、凄惨で哀しいのに犯人が見えないもどかしさ。主人公の刑事と同じようにもがき苦しむ観客。傍観者になれずどんどん引き込まれていく。結局、寝つきも悪かった。それほど意識に残る作品でした。
ラストで刑事をやめたらしく温和で明るさを取り戻した主人公の顔色が一挙に刑事に戻る。導入部と反対に、収穫前水田にパンしていくシーンが岩代太郎の音楽と共に鮮やかに残る。
観やすいけど胸糞悪い、これぞ映画!なザ・韓国映画
韓国で実際に起きた華城連続殺人事件を元にした、韓国サスペンス。
地元のポンコツ刑事パク・トゥマンと冷静沈着なソウル市警のソ・テユンが、農村で雨の夜に頻発する強姦事件の犯人を追う。
久しぶりに痺れました。
好き嫌いの好みはあるにしても、これは間違いなくすごい映画。
当時まだ未解決だった元の事件。
この映画を通して、観ているであろう犯人に語りかけ、韓国の警察の闇を暴き、映画の可能性を示したポン・ジュノ監督に拍手。
ポン・ジュノ監督ならば、今回もブラックジョーク系なのかと思いましたが、今回はシリアス全振りでした。
今まで観てきた韓国映画の中でもトップレベルの胸糞具合。
でも、最後まで観入ってしまう。
むしろ気持ち良いくらい、本当に誰も救われない。
いつもは大好きなソン・ガンホも、今回は感情移入できない嫌な奴であまり好きになれず。
本当に?と思うくらい、韓国の警察がポンコツで酷い。
拷問で無理矢理吐かせた罪状とでっち上げ物証で冤罪を生み出し、間違っていたら急に外に放り出す。
捕まらない真犯人、増えていく被害者。
そしてラストシーンの衝撃。
最近、「以前、自分がここでやった事を思い出し、久しぶりに来た」という男を見たという少女。
そして、ソン・ガンホの顔。
一瞬だけれど、『戦メリ』のたけしよりも『君の名前で〜』のティモシー・シャラメよりも確実に強烈なあの数秒。
実際の事件の真犯人は昨年捕まったらしい(別件で無期懲役が確定。時効で本件の罪には問えないらしいが…)。
とにかく強姦事件は胸糞悪い。
いくら脚色してあるとはいえ、これに似たことが起き、解決できずに犯人が捕まらなかったというのが恐ろしい。
(映画では)様々な規則性や共通点を見つけるも、犯人逮捕には繋がらなかった。
日本であっても未解決事件は山ほどあるわけで。
それぞれひとつひとつに犯人がいて、未だに娑婆でのうのうと暮らしていて、我々を嘲笑っていると考えるとゾッとする。
傑作だった。
それにしてもグァンホが不遇すぎるよね(涙)
凶悪事件をこの監督独特のタッチで描く
凶悪事件がテーマの割に、コメディタッチの展開なので、やや違和感を感じた。結局犯人は捕まらないという事は、冒頭に未解決事件との説明でわかっていたことではあるが、やはりちょっと消化不良気味だった。ただ、最後の少女との会話で、犯人がまだ生きていて、数日前にここに来ていたと分かる点に、犯人逮捕の手掛かりになりそうな予感に救われた。
あ、こ、こういう作品なんだ。知らなかった。てっきり犯人逮捕まで描か...
あ、こ、こういう作品なんだ。知らなかった。てっきり犯人逮捕まで描かれるものだと思っていた。
ラストで女の子が犯人と思われる人物の顔を見ており、「普通の人」と言う。事件を解決するストーリーではないんだと思ったが、「え、もしかして冒頭の強かん犯!?」と勝手に思ってしまった(未解決事件だったことをそもそも知らなかったので…)。
そして割と最近になって収監されている人が自白したとの記事を見て、方向的にはというか、この映画が伏線みたいになって現実とリンクしてしまい唖然とした。現実の犯人(と思われる人)は義妹への強かん殺人等で収監されているし。
勝手になんとなく繋がっただけなんだけど、うまく言えないけど、ポン・ジュノ監督すごくないですか…
告発系なのね。
見たいみたいと思いつつはや数年だった本作ですが、特集上映がかかったので観てきました。2021年の初映画館です。
ポンジュノ監督作で名作らしいとの事前情報しかなく見たので、若干面食らいました。
あの暴力的で偏見に満ちた捜査なによ、吐き気する…
女が完全に性的客体、吐き気する…
10000%ホモソーシャル社会、吐き気する…
と思って見ていました。
例の如く人の名前と顔が一致しないし(わたしの問題やけど)、カラーなのにくすんだ色彩が、老の眼が近づいている今年40さいにはなかなか目になじまずだったのですが。
捜査官、捜査環境への告発として機能していると思えた頃からはまりました。
そして、ちょいちょい入ってくる笑いも好きでした。
犯人が誰か映画内ではわからないまま終わる予感が漂った頃から(DNA不一致の発覚)描きたいものが見えてきた感があり、より興奮しました。
思い込みというか、見たいようにストーリーを勝手に作ってしまうのよね、のめり込めばのめり込むほど。客観的事実と主観的憶測を混ぜないことが、すごく難しいってこと、を描いてるのかなぁと解釈しました。
あと、2003年の子供のセリフね、普通の顔だったってやつ。
ゾッとしましたよ…真実味が感じられて。
さらに、わたくし、アメリカのドラマ・クリミナルマインドが大好きでね、BAUの人がやりそうな捜査を妄想しながら見ました。
うーん…
自分は結末が、つまりは犯人がしっかり分かって終わりたかった。普通の顔、つまりどこにでもいる人間が、あんな酷い殺人事件を起こしておきながら、生活しているってことを監督は言いたかったのか。それとも、伏線を回収できず、自分が気付けなかっただけなのか。ソン・ガンホら田舎の警察は尚更、ソウルから来た刑事も含めて操作方法が杜撰だし、容疑者と思わしき人達への取り調べは酷い。一番怪しんだ容疑者に対しても、ラジオにリクエストしていたというだけで怪しみ、自分の会話した女子が殺されたからと言って、更なる証拠無しに感情的に追い詰めるのが少し共感できなかった。ソン・ガンホは何を演じても上手い。他の方のレビューを参考にこの映画を解読したいと思う。
いいね
実際にあった事件をモデルにして作られた映画。当時の韓国警察に非難の声が当てられていて、よそから見ていてとても興味深かった。
歌、雨などのミスリード、占い師に頼るという暴挙、犯人を止められず(現実では模倣犯すら出たらしい)当時の捜査の混迷具合がよく伝わってきた。
当時韓国ではDNA鑑定できなかったというのも初めて知った。
真犯人を捕まえられず、しっぽを掴んだと思ったらどれもこれも違う。
都会から来たやり手の若手刑事と地元の壮年刑事のコンビを通して描かれるサスペンスでとても渋い。
救えなかった命を過度にドラマチックに描かず、淡々と場面を進めていく展開は少し単調だけど面白い。犯人を唯一はっきりと見た目撃者の死に方は、ええ…となったけど。
生き残った被害者、遭遇したかもしれないトイレの向こうの影を見た人物、どれも最後まで犯人の影は捉えられるものの逮捕には至らなかった。
最後の遺体の捨てられた溝を覗き込む、引退した主人公が犯人の顔を聞いたときの「どこにでもいる普通の顔」っていう答えが無情でいい。
今もどこかで連続殺人の犯人が生きているという痛烈なメッセージがとても印象的だった。
良いサスペンス映画だった。
韓国映画の怖しさ
DVDで見た。
農村でおこる連続殺人、実際の事件を元にできたというストーリーだ。実際の事件は知らない。
でも、この映画でまず驚くのは韓国の警察のとんでもない捜査方法だ。昔の日本もあったのだろうな。とにかく強引に自白させる、そして証拠も捏造して手柄をたてて出世しようとするのだ。ひどいんだよねー(笑)
エリート刑事がやってきて段々に気持ちが通じ始める。
雨の日にある曲のリクエストがあると事件がおきる、
そのリクエストを出した人を見つけ出す。
目撃者を探りあてたのに電車に轢かれて死んでしまう、そうして操作は迷宮に入っていく。
その後、刑事を辞めて事業を始めた男が事件現場に久しぶりに訪れた。そこで衝撃のことを何気ない会話で知るのだ。犯人はまだこの村で生きてるんだ。ここで映画が終わる。あ、終わってしまうのかぁ。怖いなぁ、またおこるかもしれないんだね。
なぜだろう
実際の事件を元にしていると知ってびっくり。日本の警察映画なら殺人が起こったら、ロープ張って勝手に触らないように…ってする場面が多い中、始まりが溝を覗き込むところからでまさかそんなとこに死体があるなんて…しかも関係ない人が普通に歩いてるし走ってるし、そんなん現場保存とかいう以前の話だなと。
でっち上げの犯人が殴る蹴るされつつ、どうにもならず。怪しい奴も結局違って…。最後は驚愕ですね。
普通の顔って一番難しい。
警察頑張ったんだけど力不足でした
韓国史上最悪の連続殺人事件を描いたポンジュノ監督作品。
警察の強引な捜査が描かれてるが、当時は日本もこんな強烈な捜査をしてたのかも。
警察によるリンチまがいの暴力による自白の強要場面が凄い。
DNA鑑定も韓国では出来ないのでアメリカへサンプル送って鑑定してもらうような時代背景。
終始ハラハラドキドキでした。ポンジュノ凄い。
後からwikiで調べたら、この作品が公開になってから何年も経った後、DNA鑑定の精度が上がった為真犯人は判明したらしい。けど、時効だったそうです。
ポン・ジュノ/ソン・ガンホ
劇場公開時鑑賞。DVDで再鑑賞し傑作だと再認識しました。
初めて観た時は警察の捜査があまりに無茶苦茶でドン引きしましたが、今となっては韓国映画あるあるでした。
雨のシーンが多いこともあり、暗く陰鬱な画面はちょっと『セブン』を思わせたりします。
めちゃくちゃな捜査に埋もれていた手がかりが伏線になったり、ちょっと無理のあるところもありますが、最後「さあこれで解決だ!第三部完!」からのはずし方までいいように振り回されました。脳筋の暴力刑事とスカした頭脳派刑事というちょっとステロタイプだった二人が、終盤立ち位置が入れ替わる構成により、人物像にもグッと奥行きが出てくるのも見事です。
そしてエンディングのガンホの表情は、視線の泳ぎ方や瞬き一つまで素晴らしく、強い印象を残しました。
中盤までは 連続殺人を追いながらも滑稽なシーンが多く それは容疑者...
中盤までは
連続殺人を追いながらも滑稽なシーンが多く
それは容疑者に暴行を加えたりリンチともとれる扱いをしているシーンでさえもだ。
それがラジオにリクエスト葉書を送りつけている容疑者と対面してから一気に空気が変わる。
優しく品のある顔の容疑者は今まで追ってきた容疑者とは全く違う雰囲気で
人を見る目があると自負していた主人公が人間と言うものはもっと複雑で外見では何もわからないということに気付かされる。
ラスト、
数年後にまた容疑者の形跡が見られるが
その外見は、『普通の人』
画面を通してソガンホは容疑者の顔を見つめて、
普通の仮面の下にある本当の顔をみてやろうとする。
実際にあった事件で未解決であることと
滑稽な演出をしながらも妙にリアルな映像で
これまでのサスペンス映画とは違うおぞましさを感じた。
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