殺人の追憶のレビュー・感想・評価
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ポン・ジュノ監督の映画監督としての力量と、一貫した批判性を十分に理解することができる作品。
本作は1986年に韓国の農村地帯で発生した、実際の連続殺人事件を基にしています。事件の途中経過を切り出して物語化しているため、観客の視点は警察側にほぼ固定されています。そのため、ソン・ガンホ演じる刑事と同様、観客も犯人に翻弄される焦燥感を味わうことになります。この、どこに出口があるのか分からない緊張感を、トンネルの内部や夜道を映し出した映像が視覚的に強化しています。
事件がどのような経過を辿ったのかは諸々の解説が示すとおりです。犯人の狡猾さが警察を翻弄したのは確かですが、本作では警察の捜査方法に大きな問題があったのではないか、という疑問を投げかけています。当時の韓国は軍事政権下としては比較的治安が良かったようですが、事件発生の三年前には大韓航空機撃墜事件が発生するなど、軍事的緊張が続いていました。そのため警察力を国防関係に転用するなどの人員不足が生じており、それが現場の捜査不徹底に繋がったようです。さらに軍事政権の影響からか、当時の警察は自白重視、拷問黙認の捜査手法がまかり通っており、むしろ事件の究明を遠ざける場合もあったようです。
こうした韓国の暗部を描き出す姿勢はもちろん『パラサイト』に至るまで一貫しており、ポン・ジュノ監督の作家としての揺るぎなさを思い知る一作でした。
文句なしに韓国映画史上のベストの一本だろう
『パラサイト 半地下の家族』でカンヌとアカデミー賞を制したポン・ジュノ。彼の2作目にして代表作とされる今作をようやく名古屋シネマテークの特集『鬼才ポン・ジュノの世界!』で観ることができた。
そしてこれは噂に違わぬ傑作だった。
1986年、ソウルにほど近い農村で発生した女性連続殺人事件。それを追う刑事たちの焦燥。真犯人にたどり着けぬまま犯行が繰り返される。ユーモラスでゆるい空気が緊張感を増し狂気へと変わっていく展開が秀逸。
2003年のラストシーンで知るタイトルの意味。美しい田園風景が情景となった。激しく感動した。刑事を演じたソン・ガンホとキム・サンギョンが文字通りの名演。
実話 華城連続殺人事件
何も考えずただただ期待を込めてスクリーンの前へ
最後のラストをどう捉えるか、また舞台となった当時の韓国の田舎の有り様を予備知識なく見るとどう思うかで評価が少し別れるかもしれない。ただ傑作である事に間違いなく最後のラストまでは間違いなく「パラサイト」を凌いだ出来。見る前には舞台となった年代をきっちり認識しておかないと、ラストの転調に付いて行けず戸惑う。どんなに抽象的に評してもラストが肝な処は変わらない。限りなく★5つだがラストの解釈に★0.5の含みをつけた。
うーん。。。
多分観る人からみたら最高の映画なのかな?
全体評価が高かったから期待して、お金を払ってまで借りてみたけど、途中寝ちゃったしw
個人的に見終わった後に考えさせられる映画はきっと自分の好きな映画じゃないんだと思う。
だから低評価。
冒頭から、ちゃんと未解決事件って言ってるから、きっと犯人は誰かわからず終わるのかなと
思ってたけど、見終わった後はあんまりスッキリしなかった。
ただ、人間の葛藤とか不安、苛立ちそうゆうネガティブな部分はよくちゃんと描写されてて
よかったと思う。
人って、環境であーも180度変わってしまうのかなって。
あーでもやっぱりあそこまで犯人の手とか暗闇での顔見せてたからやっぱり犯人はこいつだ!
で終わって欲しかったなー。
私も一応〝普通の顔〟だと、あの少女は言ってくれるかな?
軍事政権下、ということは歴史的な一般論からすると、まぁ、人権はお上次第。ということは地方の官憲の倫理観に清廉潔白を求めるのは、そもそもお門違いなんだろうな、という前提を飲み込みながら見てるうちに、この世界観にいつの間にか慣らされてくる。
アカデミー賞という結果を知っているので、後付けの理屈じゃないの?
と言われれば否定はしません。
世界に認められるモノには、村上春樹さんの小説と同じように、作品の中で感じるある種の共鳴する部分が(自分の母国とは歴史も文化も伝統も違うのに)何だか自分にも分かる、と思わされる要素があります。
この映画の世界に、もし自分がいたとしたら、誰の役割で、どのように振る舞っていただろう、そう思うことがそれほど不自然ではない、そんな不思議な引き込まれ方を経験できるということは、たぶん世界に通じる普遍性の現れなのだと思います。
〝普通の顔〟……この言葉にゾクッとした人はみんな虜になってしまいます。
パラサイトの監督だが、あんまりだった。
美女ばかりを狙い、連続狂気的殺人事件が起こり、捜査するもなかなか犯人の確証がないまま過ぎ去り、殺人が起こる雨の日にラジオにリクエストする男が怪しいものの、これまたDNAが一致せず未解決のまま。
【2019年になって服役中の男が犯人だと判明する】
典型的な刑事ものの韓国映画てかんじ。
深い感銘
日常に潜む「普通の人」
とても良い映画
舞台は、80年代軍政下の韓国。暴力刑事を嘲笑うかのように次々と殺人事件が起き、犯人は決して捕まらない…。
映像はどこか暗く、この映画に出てくる人物もみんな鬱屈とした表情をしているのは、当時の人たちの心理を表しているよう…。
この映画のメッセージは、ラストシーンの台詞にあるのだろう。曰く、犯人は特別な誰かではなく、そこら辺にいる「普通の人」であったと…。つまり、それはあなたかも知れないし、私だったのかも知れない…。
刑事たちは、犯行の動機や連続性に意味を持たせようとするが、結局それが無駄だったのは、こじつけや一見理路整然とした証拠も、結局は、彼らの都合で出来上がったものだったからだ。
あの時代、なにが起こったとしても、それは"特別"でも不思議でもなく、その見えざるものに対する不安や恐れこそが、皆が抱えていた心情であり、いつ誰がそれを爆発させてもおかしくはなかったのかも知れない…。
面白い!
凄い!
何回も、観てます❗
ポンジュノ祭
面白かった!
なぜポンジュノはこんなにも重い実際の事件をクライムムービーの名作として見事に成立させることが出来たのか。その構成力に舌を巻いた。
筋書き、刑事達のキャラ、犯人像だけを味わう映画ではない。監督は、自分が生きている同時代のあの頃の韓国の田舎村を描きながら、それがいつしか遠い過去になることを察知しながら映像を綴っている。
何が事件を迷宮入りさせたのか。地方の旧態依然とした警察署のずさんさは、韓国社会そのものの混乱、暗黒の時代の反映だ。未解決事件を通して私たちもあの頃を「追憶」しているのだと感じた。
それでいて、ギャグ漫画みたいな飛び蹴りとか、面白い刑事たちの掛け合いに笑ってるうちに、警察の非道な行為に観客自身もいつしか共犯者になっていく。
そうして全てをラストのソンガンホの無言の表情に集約させた。
映画の世界から現実の世界へと目線が移る。
事件は終わっちゃいねえ。現在進行形だ。平凡な顔のテメーはまんまと社会に紛れて映画館でこれを観てんだろ。今、どこにいる!!
ソン・ガンホ刑事
2003年公開。音楽岩代太郎。
130分。
1980年代後半に起こった韓国の連続殺人事件の捜査を追う。
DNA鑑定は、韓国ではまだ出来ず、アメリカまで証拠品を送って鑑定してもらうというエピソードがある。
捜査車両がエンストして、押してエンジンがけしたり、現場保存がなってなかったり、たいへんな時代。
取り調べで拷問が行われていたことは、当時からかなり問題になったらしい。
ある刑事が、被疑者から返り討ちを喰らい、結果的に脚を失ったり、被疑者が自殺したりと捜査は、難航を極める。連続殺人事件が起きていて、犯人は見つからず、犯人の証拠も上がらず、警察は殺伐としている。
その中に時折感じるユーモア。ソン・ガンホ刑事は、真面目ではあるが、人間が平凡すぎてこういうイカレた事件には不向きなのだ。
カンヌやアカデミー賞を受賞したパラサイトとは違う作風だが、名作だ。
デビッド・フィンチャーの「セブン」1995にも、どこか似ている気もするが、全体に間抜けというか、かなりのんびりしている。
ただ、その漠然とした景色の中に犯人がわからない恐怖はある。
犯人はお前か?
「パラサイト半地下の家族」でポン・ジュノ監督にハマり、事前知識はほぼ無い状態で鑑賞しました。ポン・ジュノ監督の出世作として度々名前を聞きますし、映画ファンとして知られるライムスター宇多丸さんもこの映画を「ほとんど完璧に近い映画」と大絶賛されていたので、期待値は非常に高かったです。
結論。ポン・ジュノ監督らしい醜くエグイ作品。観る人を選ぶが、ハマる人にはとことんハマる。正直私の好みとは外れる映画なので大絶賛とまではいきませんが、それでも一見の価値がある素晴らしい映画でした。
あらすじ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ソウル近郊の農村で、女性を狙った凄惨な連続殺人事件が発生した。地元の刑事であるパク刑事とソウル市警から派遣されてきたソ刑事が対立しながらも事件の真相を追い求める。
韓国で実際に起こった未解決事件である「華城(ファソン)連続殺人事件」を題材とした作品
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題材となった事件の真犯人は2019年に判明したらしいですが、この映画が公開された当時(2004年)にはまだ犯人が不明な状態であったため、この映画でも犯人は不明の状態でラストシーンを迎えます。
当時の社会情勢などのせいもあって思い通りの捜査ができずに犯人を取り逃し、パク刑事とソ刑事の二人が事件に振り回されどんどんと疲弊していくのが演技や演出から分かります。
映画冒頭では拷問のような取調べを行なって事件の犯人をでっちあげようとした粗雑なパク刑事と、冷静に事件を分析して捜査に当たっていたソ刑事が対比的に描かれます。しかし映画後半では一転、前半で冷静な性格だったはずのソ刑事が事件に振り回されてみるみる疲弊し、冒頭のパク刑事のように犯人のでっちあげを行おうとする描写がみられていきます。
このような登場人物の心境の変化が丁寧に描かれているため、観ている我々も犯人がなかなか尻尾を出さないことに対して歯がゆさを覚えます。
そして衝撃のラストシーン。一人目の犠牲者の発見現場で少女と会話した主演のソン・ガンホの顔のアップ。鳥肌が立つくらいに衝撃を受けたシーンです。ポン・ジュノ監督は「犯人がこの映画を観ると思って、ラストシーンでソン・ガンホと犯人が見つめあう構図にしたかった」と語っていましたが、これが本当に良かった。
犯人の顔を問われて「普通の人だった。」「どこにでもいる顔。」という少女の台詞も「犯人がどこにいてもおかしくない」という言葉に他ならず、非常に衝撃的でした。
【2020年9月追記】
どうやら、実際の事件の犯人も獄中の映画上映会でこの作品を鑑賞していたらしいですね。
ポン監督が犯人に仕掛けた「刑事役のソン・ガンホが犯人を見つめる構図」が思惑通りに機能しましたね。素晴らしい。
今まで信じていた物を信じられなくなる過程
韓国映画らしいちゃらしいけど…。
正直に言って今一つの感想でした。連続殺人事件の中、重苦しい雰囲気に馬鹿馬鹿しいどこか茶番的な取り調べといった風刺的な場面を挟みクライマックスへ。ただ、今一つなのはテーマが弱い、前半は冤罪を風刺して取り上げ、後半はまだ捕まらない殺人犯への警告。私達の周りには捕まらずに多くの犯罪者がのざらしになっているという理不尽さを歌いあげているが最後の捻りはあるもの、見終わった後の虚無感や虚脱感も中途半端に感じた。こういったアンハッピーエンドの作品は多くあるがその中でもまあ、中の上位にしか思えない。韓国にしか解らない国全体が抱える闇を描いたのなら物足りなさを感じてしまいます。最新作のパラサイトはまだ観ていませんがあまり観たいとは思わない。多分、個人的に韓国映画は恋愛もの以外は合わないのだろう。なんとなく邦画の亜流的な出来にしか感じない。
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