「犯人はお前か?」殺人の追憶 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
犯人はお前か?
「パラサイト半地下の家族」でポン・ジュノ監督にハマり、事前知識はほぼ無い状態で鑑賞しました。ポン・ジュノ監督の出世作として度々名前を聞きますし、映画ファンとして知られるライムスター宇多丸さんもこの映画を「ほとんど完璧に近い映画」と大絶賛されていたので、期待値は非常に高かったです。
結論。ポン・ジュノ監督らしい醜くエグイ作品。観る人を選ぶが、ハマる人にはとことんハマる。正直私の好みとは外れる映画なので大絶賛とまではいきませんが、それでも一見の価値がある素晴らしい映画でした。
あらすじ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ソウル近郊の農村で、女性を狙った凄惨な連続殺人事件が発生した。地元の刑事であるパク刑事とソウル市警から派遣されてきたソ刑事が対立しながらも事件の真相を追い求める。
韓国で実際に起こった未解決事件である「華城(ファソン)連続殺人事件」を題材とした作品
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題材となった事件の真犯人は2019年に判明したらしいですが、この映画が公開された当時(2004年)にはまだ犯人が不明な状態であったため、この映画でも犯人は不明の状態でラストシーンを迎えます。
当時の社会情勢などのせいもあって思い通りの捜査ができずに犯人を取り逃し、パク刑事とソ刑事の二人が事件に振り回されどんどんと疲弊していくのが演技や演出から分かります。
映画冒頭では拷問のような取調べを行なって事件の犯人をでっちあげようとした粗雑なパク刑事と、冷静に事件を分析して捜査に当たっていたソ刑事が対比的に描かれます。しかし映画後半では一転、前半で冷静な性格だったはずのソ刑事が事件に振り回されてみるみる疲弊し、冒頭のパク刑事のように犯人のでっちあげを行おうとする描写がみられていきます。
このような登場人物の心境の変化が丁寧に描かれているため、観ている我々も犯人がなかなか尻尾を出さないことに対して歯がゆさを覚えます。
そして衝撃のラストシーン。一人目の犠牲者の発見現場で少女と会話した主演のソン・ガンホの顔のアップ。鳥肌が立つくらいに衝撃を受けたシーンです。ポン・ジュノ監督は「犯人がこの映画を観ると思って、ラストシーンでソン・ガンホと犯人が見つめあう構図にしたかった」と語っていましたが、これが本当に良かった。
犯人の顔を問われて「普通の人だった。」「どこにでもいる顔。」という少女の台詞も「犯人がどこにいてもおかしくない」という言葉に他ならず、非常に衝撃的でした。
【2020年9月追記】
どうやら、実際の事件の犯人も獄中の映画上映会でこの作品を鑑賞していたらしいですね。
ポン監督が犯人に仕掛けた「刑事役のソン・ガンホが犯人を見つめる構図」が思惑通りに機能しましたね。素晴らしい。