マルチュク青春通りのレビュー・感想・評価
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ケンカに明け暮れる男子学生たちの汗臭い青春ストーリー
いきなり、ブルース・リーの映画の一場面から始まります。
1978年は忘れられない年だと最初に主人公のナレーションあり。日本でいうと昭和50年代です。韓国でもブルース・リーはすごい人気だったんですね。
甘酸っぱい青春ラブストーリーかと思ったら、暴力描写ありあり(男子生徒大暴れ)で、体罰なんて当たり前の時代で、先生もヤバかったりするんですが、舞台が日本じゃないのにノスタルジー感たっぷりの青春熱血グラフィティ。最初は自分を抑えて「おとなしい優等生」だったヒョンスが後半、怒りを爆発させて、ジークンドーに目覚め、ヌンチャク振り回して、猛特訓。「屋上に来い」と、風紀委員を呼び出し、ボコボコに。見ていて爽快でした。男子生徒ばっかりの、むっさい感じはありますが、結構、楽しめました。
ヒョンスの不器用な恋愛奥手な感じもよかったです。ウンジュと2人が汽車に乗って出掛けるシーンが好き。でも、結局、ウンジュは再び、ウシクのもとへ戻ってしまったよう。(駆け落ちしたようだ) ヒョンスの実らない恋が切ないです。(T_T) (それにしても、ウンジュが可愛すぎて、年上の女性という感じがしませんでした。若き日の牧瀬里穂みたいだった)
クラスのボスのウシク、どこかで見た顔だ・・・と思ったら、キム・ギドク監督の『嘆きのピエタ』の人だった!(イ・ジョンジン) よ〜く見てみると、この人、ペ・ヨンジュンによく似ています。ヨン様がめがねをとったら、こんな顔です。
ウンジュに振られたヒョンスが食堂のおばさんに誘惑されるところを見て、韓国の『グローイング・アップ』だ!と感じました。(グローイング・アップ、70年台あたりのものすごく古い青春映画)
クォン・サンウ、年齢的に厳しいはずなのに、ナイーブで多感な高校生役をうまく演じており、ブルース・リーになりきっているところも半端じゃなくてよかったです!
ブルース・リーへのオマージュがあるだけで評価が上がってしまう・・・
70年代は日本もブルース・リーに憧れる若者が多かった。韓国だって軍事政権下ではあるものの同じ状況だったようだ。クラスの中には、必ず誰かがヌンチャクを持ってきて、ブルース・リーの真似をする。この映画でもそのブームが、大げさではあるが、しっかりと描かれていた。エロ本を同級生に売りつけるハンバーガー(パク・ヒョジュン)だってヌンチャクを使いこなすし、オレンジ色のジャージを着ると、クラスメートが集まって『死亡遊戯』ごっこを始めてしまうのだ。
ブルース・リー以外の海外の映画は人気があるようだ。登場するのは日本の映画雑誌「スクリーン」。表紙はオリビア・ハッセーだったりする(1977年9月号)。そして、PENTHOUSE誌やPLAYBOY誌は読みまわしすぎなのだろうか、全てボロボロだった。こうした雑誌を学校に持ってきている光景も日本と同じならば、持ち物検査があるところも同じ。しかし、根本的な相違点は、韓国の学校には軍人がいるということだ!この軍人や教師による体罰なんかは日常茶飯事。こんな学校へは行きたくないと、日本人ならば誰しもが思うでしょう・・・
ユ・ハ監督は、暴力がまかり通る学校生活に対して、真の「男らしさ」と「喪失」というテーマを反面教師的に描いていると言います。暴力に対する暴力では何も解決しないのだが、男が成長する過程において、避けて通れない世界。クラスのボス的存在であるウシクに裏切られたハンバーガー。ヒョンス(クォン・サンウ)が失恋したとき。青春時代の痛い経験を権力への追従や暴力で対抗することで昇華しようと間違った選択をしたことを反省しているのでしょう。もちろん、ランクによるクラス分けや体罰に対する批判もうかがえます。
韓国料理屋の女主人に迫られるシーンなどはやりすぎかもしれないけど、学校生活や純情だった恋心のエピソードは自分の若かりし頃を思い出し、ちょっと恥ずかしくなってしまったほどです。「フィーリング」なんてのも恥ずかしいぞ!結局、ウシク(イ・ジョンジン)とウンジュ(ハン・ガイン)はどうなったんだ?と、まるで自分が劇中の人物になったかのような錯覚に陥るような演出もよかったと思います。
【2005年9月映画館にて】
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