「柴咲コウを愛でる映画」メゾン・ド・ヒミコ ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)
柴咲コウを愛でる映画
「ジョゼと虎と魚たち」の犬童一心監督と渡辺あやのコンビの第2作は、ゲイのために作られた老人ホーム、メゾン・ド・ヒミコを舞台に繰り広げられる悲喜こもごもの人間劇。
感情移入できるかどうか、という1点で論じてしまえば、ある意味ベタな恋愛ものの「ジョゼ~」の方に軍配が上がると思うし、僕自身もあの映画は好きなのだけど、内容の豊かさという点で言えば、人生の不可思議さを描いている本作の方に、何とも抗いがたい魅力を感じてしまう。
その豊かな物語の構成に貢献しているのが、一連の役者陣。オダギリジョーの好演、老人ホームのカリスマ・オーナー卑弥呼を演じた田中泯の存在感、そして、新入社員に必ず手をつけるロクデナシ若社長役の西島秀俊や、個性豊かなゲイ、ニューハーフの面々など脇を固める役者まで、みながイイ仕事をしている。
中でも特筆すべきは、柴咲コウ。メイクダウンしてまで地味な事務員を演じた彼女だが、メゾン・ド・ヒミコの住人たちと出会ったことで心が解放されてゆく過程を実に魅力的に演じていて、コスプレショーまで披露するサービスぶり。そこからは彼女自身も撮影を楽しんでいた様子が垣間見えるし、いつも不機嫌そうな顔をしている印象の強い柴咲が、何とも可愛く見える瞬間があるのだ。そういう意味で、本作は柴咲を愛でる映画だ。ただし、“脱ぐ”ことが映画の重要な要素であった作品なのに、思い切って脱げなかったのはマイナスポイント。決してスケベ心だけで言ってるわけではないので、あしからず。
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