「どんなにテクノロジーが発達しても、ロストイントランスレーションは解決しないでしょう」ロスト・イン・トランスレーション あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
どんなにテクノロジーが発達しても、ロストイントランスレーションは解決しないでしょう
ロストイントランスレーション
2003年 米国映画
渋谷のスクランブル交差点が世界的に知られるようになったのはこの映画の影響だそうです
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFTは2006年の映画
その作品も影響したようにおもえるのですが、本作のほうが3年早いです
タイトルも内容も、劇中の通訳のように、言葉では、本当の意味が伝わるとはかぎらないということを表しています
言葉で伝えても、本当の胸のうちは伝わらない、ということです
遠い日本では米国人は孤独を感じています
言葉が通じないところで、男と女はそれを知ります
本作の映画の頃から、だんだんとインバウンド観光客が増えてきて、いまでは、オーバーツーリズムだ!と音を上げるほどになりました
なので私達日本人も、外国人にはすっかり慣れっこになってしまいました
だからいつの間にか、私達も雑に外人と呼んでいたのに、いまは外国人と呼ぶように変わりました
そして英語がろくにできなくても、下手なりにコミュニケーションすることにも抵抗感がなくなってきました
iPhoneは2007年の発売
Google マップは2005年のサービス開始
今ではスマホもGoogleマップは当たり前で、日本語の壁も
今や翻訳アプリでかなり低くなりました
路地の奥の日本人にもあまり知られていないような店にまでスマホを握りしめて外国人がふらりとやってくる、そんな時代になりました
自分も、行き着けの音楽バーが、どうしたことか、世界中から外国人が沢山やって来る店になってしまい、気がついたら日本人は自分とマスターだけ、あとは全員外国人という夜もあるようになり、もう10年くらい経つようになりました
酔っ払って、どこから来たの?とか話すことも普通のことになりました
そういえば、ジャパニーズウイスキーが外国人達に人気になってきたのも本作の頃からのことのように思います
ロストイントランスレーション
出鱈目な英語でも、かえって意味はなぜかしっかり伝わっているようです
AI が発達して、それこそ同時通訳してくれるのもそう遠いことではなさそうです
外国人の目から、見える文化の違い
自分で調理しないとならない最低のランチなんてものも、違いのわからない皿の肉の内容も、今では彼等が自らスマホを検索して、なるほどそういうことか!と勝手に理解してくれている世の中になりました
日本にやってきた外国人達も、もうあまり孤独ではないようです
パーフェクトデイズは、2023年の映画
かなり親日家で有名な監督の作品です
それでも彼は文化の違いとして目についたものを撮っています
巨大都市なのに静けさがあること、公衆トイレが美しいなど、など
インバウンド観光の外国人達のネットの書きこみでも、他に公共交通機関の便利さ正確さ、キチンと行列を作って乗り降りする、歩行はで誰もが信号を守る、ゴミ箱が無いのに道にゴミが落ちていない
とか、とか
これらも、本作のときなら、ただ単に文化の違い、奇妙(ファニー)な文化の国というだけだったでしょう
今は、彼等がSNS で、なぜそうなのかを自分自身で調べて理解してくれているようです
ロストイントランスレーション
言葉や文化の違いは、このようにテクノロジーが乗り越えさせてくれそうです
それでも、人間どうし、男と女の微妙な感情は
そうではありません
どんなにテクノロジーが発達ても、ロストイントランスレーションは解決しないでしょう
もし解決したら、逆に怖いです
一層の努力が必要なようです
それを本作は教えてくれました