「次は映画館で観てみたい!」リトル・ダンサー humさんの映画レビュー(感想・評価)
次は映画館で観てみたい!
ピアノの鍵盤をぽろんぽろんと触るビリー。
写真立ての母がみつめる脇の小窓から薄日がさす。
その場所に彼の安心があるみたいだ。
母が遺したピアノを焚き木にしなければならなかったクリスマスの晩、普段は強い父が咽び泣く。
その意味をこどもにも隠せない状況は、ふとしたきっかけでバレエダンサーの道を夢みたビリーに現実の厳しさを突きつけた。
小さな炭鉱の田舎町はストに荒れ、父や兄のような労働者にとり日常はその雪のように冷たい。
ビリーの憧れの世界はその雪のように優雅な別世界だ。
それでも夢を叶えたいと奮闘するビリーと家族はたびたび衝突していく。
本当はビリーを支えたい父と兄の葛藤と慟哭もよくわかり、高齢の祖母の姿も切ないほどだ。
そんな時、ビリーに才能を感じたウィルキンソン先生との出会いがあきらめない人生を後押しすることに。
白鳥の湖をBGMに、川を越えながら先生がそのストーリーを語るシーンがいい。
未知に囲まれたこどもに世界を感じさせる言葉が好きだ。
あの頃のビリーの気持ちをどう救えるか。
それを考えられるよき理解者との巡りあいが人生の違うドアの鍵になったのだな。
やがて才能の片鱗と内面から湧く汚れなき情熱の温度を外に向けて伝える時が来た。
喜びと寂しさが混ざり合う家族の別れ際はみんなの愛が溢れている。
自分の経験も重なり胸が痛んだが、そんな思いを感じることでまたビリーは一歩成長していくのだろう。
そしてからだのなかに電気が走るような感覚で全身を躍動させる鳥のように羽ばたく、あの舞台のラスト。
軽快な音楽と明るいダンスが随所に挟み込まれ、ほとんどのカットにアクセントになる明るい色がパーンと目に飛び込む。
それはどんな世界でも、大人の手で消してはならない無垢なこどもたちの希望の色だった気がする。
未来に向かって自由に広がる世界が誰にも公平ならばどんなにいいだろう。
しかし、そうもいかない時代と環境のなかで、何に出会い誰に出会うか。
無邪気だけど芯のあるかわいいビリーを応援しながら夢中で観た。
そして私は私の立ち位置で私の人生をおもう作品にもなった。
修正済み
共感・コメントどうもです。
最近は備忘も含めてストーリーも細かく(落ちや最終的なネタバレはネタバレ有りでも書かないようにして)レビューを書いているので、最初から全部書き直しは精神的にキツいですね。
共感いただきましてありがとうございます😊ジャーン❣️映画館で2回観て来ました。今を逃すともう無いだろうな、と思い。冒頭から、好きー❣️と思ったので。
ピアノを壊したのは薪にする為でしたか。そんな量にもならないのに。私は、母を吹っ切る為だと思いました。父自身、妻を忘れ切れずにいて苦しんでいるようでしたので。パンフも買えました、まだ積読ですが。
私は見たことがなくて、(興味もなくて)、勝手に思っていたイメージがあったのですが、全く違って、社会情勢も含めて、なかなか芯のある映画でした。
突然流れてきた「London Calling」が強烈でした。
2日間にわたり、続けて2回見てきました。