「感情」リトル・ダンサー なつさんの映画レビュー(感想・評価)
感情
ほんのきっかけ
素質はきっかけ、才能は後からついてくる
努力と信念を持って
舞台は炭鉱の街ダラム
ビリーは炭鉱スト真っ最中の厳しい父と兄と痴呆の入った祖母との4人暮らし。
父からイヤイヤにボクシングを行かさせる。祖母の世話をし時折、亡き母のピアノをそっと鳴らしとてもとても狭い世界で生きている。
ボクシング場にバレエ教室が入るようになりたまたま見たビリーは音楽と共に軽やかに踊るバレエに魅せられつい共に踊ってしまう
それから彼はこっそりバレエを習いだす。
咎めることなく受け入れる先生のサンドラ
そこから彼の世界は鮮やかに色づき始める。
狭い街を軽やかにステップを踏みながら走り、バレエの本を見つつ(確かにバレエの専門用語わかんないよ…)自宅の鏡の前で、バレエ教室で、幾度もターンをし、それを達成した彼の笑顔がとても眩しい。
決してご都合主義ではなく、どこでもダンスしやっとできるようになる過程も彼のあちこちで踊るシーンできっちりその努力が伺える作りがとても良い。
作品を強く支えているのがBGM
あーー、そうそう!ここでこんなのが欲しかったのよ〜って懐かしい音楽をバリバリに流してくれるので最高にエモがすぎる。
あと、カットなども大胆かつそれぞれの背景や心情を表しているのでとても見応えがある。
ILOVE TO B OOGEが流れるシーンは踊るビリーやその家族のそれぞれのカットが流れるところなど良かった。元ダンサーの祖母が昔を思い出す様にダンスをヨロヨロするのがかわいい。
とにかく、芸コマの連続で捨てるシーンがないのでは?と思うよ。
亡き母親からの18才になった自分に宛てた手紙をサンドラと共有する。ボクシングリングに座り。
覚えるまで読み込んだ手紙。11才の彼が読んだのは自分の狭い世界を悟っていたからか?
そこでのサンドラとのやりとりとダンスで2人の絆は深まる。
個人的に好きなのはここでやりとりの前にサンドラがサンドバッグをボンっと叩いてやってくるところ。
男がやるのはボクシングで女がやるのはダンス
そんな事はないのだ。
ビリーは踊り続ける
楽しい時も辛い時も、怒りを感じる時、苛立ち
全ての感情をダンスという方法で爆発させる
後に彼は「電気」と語っているが、まさにそれなのである。
もうね、観ててずっと泣いてたのよ…
ストで兄が捕まり、オーディションの機会も逃し、父との亀裂が入るクリスマス
父は母親の形見のピアノを斧で壊し、暖炉でくべ「最悪のクリスマスだ…」
そしてビリーは友人のマイケルとダンスをしているところを目撃され、威嚇、挑戦する様に父の前でダンスを魅せつける。
父は変わる。
デモの先頭を斬って戦っていた父はビリーのためにデモをやめてしまう。
バスに乗る父を見つけて何故だ!と追いかける兄。
目を背ける父。
「ビリーには未来がある!!」
あーーーーーーーーーーーーーーーもぅ…涙腺爆発だよ…
鼻水まで出た。
影の主役は父だなぁとずっと思ってはいたけど、頑固で常に男子たる者!みたいな父がサンドラとのバトル、ピアノを叩き壊すのは亡き妻への未練。
ビリーのダンスと情熱を見て激しく心を動かされ、サンドラの援助ではなく自らのお金で息子を支えたいと願い、ストに降伏し、カンパを集める。仲間ではとても頼りになる男なことが伺える。
ビリーと共にオーディションに向かうが、本物のバレエを見た時の驚きや息子をしっかりと支える姿。漢だよっ
今まで狭い生活の中に常に合った酒とタバコに支えられ、家族が待つ中にある通知。
受け取るビリー
家族3人の心と行動がシンクロ。
受かった!
空を背景に真っ先に走りだすのは父である。
仲間の元に「受かった!!!!」
弱ったら帰っていい?
部屋は貸したからダメだ。退路を断つ愛。
バスに乗る前に父とハグ。しかも抱っこハグなのがまだ幼いビリーと父の複雑な感情が現れて良い。
11才で親元に帰れないとか怖いよ…
兄はバスを追いかける。かつてストを降伏した父を非難をしながら追いかけるのではなく、弟の未来を応援するように。
新たな未来を築いたビリーの晴れ舞台
狭い街でゲイという秘密を抱えていた親友のマイケルが綺麗になり、彼氏と共にビリーの舞台を観にくるという裏サクセスストーリーもとてもジンとくる。
少年達は飛び立つ。翼を持って
自分の好きなことのために、信念を曲げず。
出番を待つビリーの肩甲骨は羽のようだった。
過去に観た時はサクセスストーリーだと思っていたが、今回は父親に感情移入したのは己がお父ちゃん世代になったからだろうなぁ…