ライフ・イズ・ミラクルのレビュー・感想・評価
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「アンダーグラウンド」以上に身近な題材だったはずだが…
「アンダーグラウンド」までは
順を追って私の評価を上げていた
クストリッツァ監督作品だったが、
「黒猫・白猫」で肩透かしを食らい、
心配しながらの当作品の鑑賞となった。
設定は、始まるはずのない戦争が
いつの間にか身近になったという、
昨日までは
仲良く隣近所で暮らしていた者同士が、
違う民族だと言うことだけで、
今日は殺し合っているとの
旧ユーゴの内戦ニュースを思い出す。
作品の中で貫かれているのは
主人公の妻や息子への想い、
そして、人質の娘を愛するようになるのは、
民族の違いを超えても
理解しあえるはずだったのに、との想いの
象徴なのだろうが、
いかんせん話が膨らみ過ぎて、
シュールさの羅列も甚だ過ぎて
まとまりに欠けた印象だ。
題材は第二次大戦を背景とした
「アンダー…」以上に、監督には
時代的に身近な題材だったはずだが、
不必要に長尺化してしまった感があり、
名作「アンダー…」には
遠く及ばなかったように思えた。
【バルカンミュージックに乗せて、同一地域に住む異民族の愚かしき争いを描いたシニカルコメディ。エミール・クストリッツァ監督の、民族間の諍いを越えた愛を描いた人間賛歌の作品でもある。】
ー 自称”ユーゴスラビア人”のエミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」や「オン・ザ・ミルキー・ロード」では、鵞鳥、牛、猫、馬など多数の動物が登場する。
今作で、最も多く、重要なシーンで登場するなは“ロバ”である。
御存じの通り、ロバには”愚か者”と言う意味と、”辛抱”という意味があり、今作ではそれが暗喩として、効果的に使われている。-
■1992年、内戦勃発直後のボスニア。鉄道技師・ルカ(セルビア人)は、兵隊に取られたサッカーを愛する息子ミロシュが敵側の捕虜になったことを知る。
そんな中、息子の捕虜交換要員である女性・モスリム人のサバーハを人質として預かることに。奇妙な共同生活を送るうち、ルカと彼女の間に愛が芽生えていく。
◆感想
・大作「アンダーグラウンド」で、ユーゴスラビアの解体過程を物凄い皮肉を込めて描いたエミール・クストリッツァ監督。
今作では、ボスニア紛争を同じ視点で、シニカルユーモアと民族間の壁を越えたルカとサバーハの愛に落ちる過程を描いている。
・ドッカンドッカン、降り注ぐ爆弾の中、ルカは友人とチェスをし、連れて来られた異民族のサバーハを優しくもてなす。
・そして、数度、効果的に描かれる、線路上に佇むロバの姿。
・登場人物は相変わらず、超個性的でありながら、内面には善性を持った人物として描かれている。
<今作は、エミール・クストリッツァ監督の、同一地域に住んでいたのに、民族が違うだけで争う事への怒りと、民族間の諍いを越えた愛を描いた人間賛歌の作品なのである。>
"MILICA"
忙しない人間模様が繰り広げられ家畜と言う名の動物たちや陽気な音楽が所構わず鳴り響く楽しげな世界観。
クストリッツァが描く戦争は、悲惨さや哀しみを内包しながらも陽気に楽しく時には滑稽に生きる人間をコメディかのように表現した反戦映画を撮り続けている稀な映画監督だと思う??
ボスニア紛争が勃発した過酷な状況を生き抜く人々や動物たち、そんな弱者をコミカルにキャラが強い人物像で描くからこそ、哀しみだけを中心に描いたらあまりにも悔しすぎるでは無いか!?
全てを悟ったような物哀しい表情が印象的なロバのミリチャは救世主のような存在に思える。
「まさしく人生讃歌!」な動物映画
「アンダーグラウンド」で正真正銘、みんなの度肝を抜かした旧ユーゴスラビア・サラエボ出身のクストリッツァ監督は、今作でもまずは娯楽に徹してます。ちなみに邦題は無冠詞のミラクルですが、英題や原題はちゃんと「a」や「un」がついてます。ここが本作を観るに当たって失望しないための注意点。
切ないラブコメと呼ぶのが適切なのでしょうが、そこに戦争が絡み、話は尋常でなくなってきます。それなのにこの人の映画に出てくる登場人物は相変わらず天然。開き直った天然さとでも言うのだろうか、本当にこの人の映画の登場人物は、もっと恵まれた環境にいる日本人からすれば焦るくらい天然なのです。そしてそこにいつも通り、なんともいい味だした動物が出てきます。特に、今作のヒロイン(?)のロバ、さいこーです。
「アンダーグラウンド」の最後の奇跡は、まさしく映画史上空前の奇跡でしたが、今回の奇跡はそれほどでもない。でも、こんな奇跡はひょっとしたら毎日みんなに起きているのかもしれませんね。
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