「イーストウッドとシーゲルが自らのイメージを覆そうと試みた野心作」白い肌の異常な夜 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
イーストウッドとシーゲルが自らのイメージを覆そうと試みた野心作
ソフィア・コッポラ監督作『ビガイルド』と同じ原作小説をベースにした異色スリラーである。長らく男性映画のシンボル的なイメージが刻まれてきたイーストウッドとドン・シーゲル監督は、この題材が自分たちの表現の枠を広げてくれると確信した。スタジオ側が「もう一つのマカロニ・ウェスタン」的な売り方をしたため興収的には振るわなかったと聞くが、彼らにとってはキャリアを賭けた挑戦作。悔いは無く、シーゲル監督も自身のお気に入りの一つに掲げていたと言われる。
ソフィアが女性目線で原作を紐解いたのに対し、シーゲルは男性目線が際立つ。女性の様々な感情を濃厚なまでに抽出した描き方にも、やや過剰で狂気じみた側面が目立つ(現代の目線からすると批判を食らうかもしれない)。だが、スリラーとしてみると大変スリリングで面白く、最初は女性たちを手玉に取っていたはずが、どんどん最悪の方へ転げ落ちていくイーストウッドの表情も見ものだ。
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