「明治政府は侍に対する敬意を欠いていた」ラスト サムライ 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
明治政府は侍に対する敬意を欠いていた
10年以上前に観て面白い映画という印象が残っていた今作。改めて観ると素晴らしい傑作だ。アメリカ政府によるインディアン弾圧と、明治政府による侍の弾圧を重ねて描いている。
侍の猛反発を招いた最大の原因は、明治政府が侍の文化と伝統に対する敬意を欠いていたことだろう。弓矢と刀しか使えない野蛮人と見下し、近代化を一方的に押し付けた。侍に対する敬意があれば、明治政府と侍の戦争に発展することも無かったのではないか。
一見すると、名誉のために死を選ぶという侍のあり方は、現代人には理解しがたい。だが、侍の文化と伝統は、彼らの人生そのものだ。それを真っ向から否定するのは、彼らの人生を否定するに等しい。人としての尊厳を傷つけられてなお生きるくらいならば、戦いによる死を選ぶと考えたのならば、彼らの選択は理解できる。
侍の徹底抗戦は、明治政府の人間にも、侍の底力という強烈な印象を残した。それは日本が外国と対等にやり合うために必要な力だと気付かされた。その意味で勝元ら侍の死は、無駄死にでは無かったと言える。
ちなみに勝元が本拠にしていた寺のロケ地は、姫路にある書寫山圓教寺。境内は広く見応えがある。姫路へ観光に行かれた際は立ち寄ってみてはいかがでしょう。
コメントする